自然災害は男女の関係なく人々を襲う。しかし、防災・減災や被災者支援、復旧・復興に関する計画は、ほとんど男性の手で作られているのが現状だ。東日本大震災の経験も生かし、男女がともに積極参加する体制を急ぎ築く必要がある。

 災害に対処するための計画を作ったり、災害発生後の情報収集や復旧活動の調整などで重要な役割を担うのが地方の防災会議だ。災害対策基本法により地方自治体が設置することになっている。

 ところが、政府がまとめた「男女共同参画白書(12年版)」によると、4月1日時点で都道府県の防災会議に占める女性委員の比率は4・5%に過ぎない。政令指定都市でも8・5%だ。前年より改善したとはいえ、東京都、愛知県、福岡県など6都県がいまだに女性委員ゼロである。

 白書が指摘するように、その地域の警察トップや教育長、自衛隊幹部など、災害と密接に関係する公共組織の幹部を委員に充てるよう法律で定めていることが大きい。そうした役職は男性が占めている場合が多く、結果的に防災会議も男性一色となってしまう。

 だがこうした制約があっても、女性の比率が2桁という自治体はある。全国で飛び抜けて高い岡山市は49人中20人、比率にして40・8%が女性だ。同市は、市が所属機関として設置する審議会などの人選で、男女どちらかが4割未満にならないようにすることを条例で義務付けている。数値目標を掲げて男女共同参画を推進する、全国でも極めて珍しい例だが、本気になれば「女性4割」も達成可能だということを実証している。良き追随を期待したい。

 災害対策基本法がこのほど改正され、委員の対象者が広がったことは女性起用に追い風となりそうだ。防災会議の女性比率が低い自治体は、積極的に女性を起用している自治体の取り組みも参考にしながら、工夫を尽くしてほしい。会議の会長を務める首長の意識が試されよう。

 東日本大震災でも、被害の影響や避難の仕方などに男女間で違いが見られた。白書によると、例えば、1人で避難した人の比率は男性が高く、数名でまとまって避難した人は男性の64%に対し女性は82%と大半を占めた。地域の人とのかかわりがより強いとされる女性を取り込むことは、減災や支援、復旧活動の効果を上げることにもつながるはずだ。

 「社会のあらゆる分野において、2020年までに指導的地位に女性が占める割合を少なくとも30%にする」というのが政府目標である。防災という、身近で今国民の関心が高まっている分野から、女性起用を着実に広げていきたい。

「社説:災害対策 女性の起用で質上げよ」@毎日jp
2012年07月04日 02時30分
http://mainichi.jp/opinion/news/20120704k0000m070108000c.html

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