東日本大震災を機に、地域住民を支える組織として見直されている自治会で、女性会長の活躍が目立つようになっている。

子育てや介護などを通し、日ごろから地域と密接にかかわり、細やかな心配りができる人が多い女性の進出に、国や自治体も期待する。

市区町村と連携し、住民が自主的に地域の様々な問題に取り組むのが自治会だ。これまでは男性がリーダー役を務めることが多かったが、それを女性が徐々に担い始めている。

大震災で被災した宮城県東松島市にある「小野駅前応急仮設住宅」の自治会もその一つ。仮設住宅は、津波で駅舎や線路が被災して一部区間が不通のJR仙石線・陸前小野駅近くにあり、80世帯287人が生活する。昨年11月、そこの初代自治会長に自営業武田文子さん(61)が就任し、住民の世話や行政、ボランティアの対応などに追われている。

武田さんは、娘と孫2人の4人暮らしだったが、津波で同市野蒜地区にあった自宅が流失。昨年8月に現在の仮設住宅に引っ越し、そこがたまたま、地区の集会所の目の前にあったこともあって自然と仕切り役を務めるように。

武田さんは、集会所に詰めていることが多く、そこに朝から昼過ぎまでほぼ毎日、70~80代の男女5、6人が集まり、お茶を飲んでおしゃべりをする。「私が女で、開けっぴろげな性格だから、来やすいのかも」と武田さん。マッサージや料理の会を開いたり、住民が元気になる試みも続けている。無報酬で多忙な日々だが、「みんなの元気な顔を見られて、やりがいがあります」。

既存の自治会でも、活動的な女性会長は少なくない。

東京都武蔵村山市の山口文江さん(71)は2006年4月から、同市大南5丁目自治会長を務める。就任後初めて出席した市の会合では、33人いる自治会長の中、女性は彼女1人。1期2年で辞めるつもりだったが、「男はいないのか」などと言われると反発心がわき、会長を務め続けてきたという。独居老人の家を積極的に訪ねたり、すいとんを作って市のイベントに参加したりと、女性の視点を生かして盛り上げてきた。

岡山県倉敷市水島北春日町第三支館長の早川美也子さん(75)は、地元の小学校にかけあって、防災のために通用門を増やすよう申請中だ。「学校を通りかかった時に見ていて、万一の時に必要と感じてましたから」。ほかの地域にも、子育て支援組織を独自に作った女性の自治会長などもいる。

自治会活動に詳しい、聖徳大学生涯学習研究所(千葉県)所長の福留強さんは、「定年後に地域に戻る会社勤めの男性に比べ、女性の多くはずっと以前から地域の課題を知っている。これからもっと女性会長は増えていくだろう」と話している。(京極理恵)

自治会 市区町村の「本町1丁目」など区画単位で、盆踊りや運動会などの娯楽から、ゴミ処理、防災・防犯まで多様な地域活動を住民が自主的に行う組織。大半は法に定めのない任意団体で、役員は選挙や互選、指名、輪番制などで決まる。名称は自治会、町内会、町会など様々。

共同参画の意識広がる…高齢者や弱者へ目配り

自治会の女性会長の活躍が目立つとはいえ、その数は男性に比べて少ない。内閣府男女共同参画局の調査によると、2011年4月現在、全国の自治会長23万1983人中1万33人が女性で、全体に占める割合は4・3%。集計を始めた07年の3・8%からも割合は微増にとどまっている。

国は重要な政策や方針を決定する過程への女性参画の拡大を目指しているが、国レベルに比べて市区町村など身近な地域での女性の進出度が低い傾向が見られる。内閣府の第3次男女共同参画基本計画では、15年に女性自治会長の割合を10%にすることを目標としているが、このままだと達成の可能性は少ない。

女性の自治会長が少ない理由はいくつか考えられる。市民社会論に詳しい筑波大学教授の辻中豊さんは、農村部では消防団や青年団で活動してきた男性が、都市部では職住接近の自営業者や会社を退職した男性が、それぞれ会長に就くことが多かったと話す。「町の『顔役』として外部と交渉するのは男性という考えも根強かった」と辻中さん。

また、「名簿上の問題」を指摘する女性会長も多い。名簿上は夫が会長や役員だが、住民の間を実際に歩き回るのは妻だったり、男性会長の下で実際に仕切るのは女性副会長だったりするケースが多く、これが自治会長の性別の割合に影響しているからだ。

ただ、自治会の大半はボランティア的活動で報酬がない上、住民の高齢化が進み、会長のなり手が少ない。そうした事情に加え、男女共同参画意識の広がりもあり、女性が会長に就く機会は増えそうだ。

三重県鈴鹿市の豊田栄美子さん(64)は、農村の生活改善運動から地域に深くかかわったこともあり、同市広瀬町自治会長に立候補し、08年4月から3年間務めた。女性がゼロだった自主防災隊に看護師など数人の女性を入れたり、「男の仕事」とされてきた川掃除などに積極的に参加したりした。豊田さんは「女性が会長になることで、女性も遠慮せず、活動に参加できるようになりました」と話す。

女性が参加しやすい自治会活動に改善する試みもある。兵庫県の丹波地域ビジョン委員会男女共同参画グループは08年、「自治会長への10の提言」を報告書にまとめた。「『だから女はあかんのや』『後片付けは女の人にまかしとかんかい』は言ってはいけない」といった提言を盛り込んだ。「仕事を終え、家庭の役割をこなした上でいろんな役を引き受けることは相当な負担。それを理解しなければ、女性に参加してもらうのは難しい」としている。

こうした様々な取り組みについて、辻中さんは「女性は、高齢者や子ども、弱者への目配りなど男性とは違った視点を生かす存在として自治会でも活躍が期待される」と話している。

(2012年2月28日 読売新聞)
http://http://www.yomiuri.co.jp/komachi/news/20120228-OYT8T00200.htm

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