東日本大震災で大きな被害を受けた岩手、宮城、福島3県の沿岸部で、離職した人の再就職が進んでいない。沿岸部で雇用保険の失業手当を受けている人は、昨年12月末時点で前年同月の10.8~1.6倍と高い水準が続く。水産加工業など基幹産業の復旧が遅れていることが要因。復旧・復興需要で建設、土木関連などの求人は増えているが、離職者の再就職につながらない需給のミスマッチも生じている。(玉応雅史、佐藤崇、田柳暁)
●水産加工復旧に遅れ/「建設・土木経験生かせず」
1月下旬、釜石市の釜石公共職業安定所。同市の文野政敏さん(50)が、その日出たばかりの新規求人情報に目を凝らした。
勤務していた岩手県山田町の自動車整備工場が津波で被災し、職を失った。失業手当は3月には切れる。生活が落ち着いた昨年8月から仕事探しを本格化させたが、自動車整備士の経験を生かせる仕事は見つかっていない。
釜石職安によると、管内のうち津波被害があった釜石市と大槌町の昨年12月の有効求人倍率は0.56倍。昨年4月の震災直後(0.20倍)から改善し、前年同月(0.48倍)を上回る。
増えているのは建設、土木関係の求人。しかし「経験や資格が求められ、この年では自信がない」と文野さんの希望には合わない。焦りを感じながらも「経験が生かせるとしたら製造業」と職探しを続ける。
岩手労働局によると、釜石職安管内の昨年12月末時点の失業手当受給者は、前年同月の3.2倍に達する。3県の労働局のまとめでは、沿岸部の受給者は軒並み前年を大きく上回っている。前年同月からの増加幅は気仙沼職安が10.8倍と最も大きく、石巻が6.9倍で続いた。内陸部では盛岡(0.98倍)、宮城県の築館(0.85倍)など前年を下回る地域もあり、差が際立つ。
昨年12月末時点の3県の失業手当受給者は、震災による延長給付分を含め6万1792人。ピークだった6月末より23.9%減少したものの、前年同月を約3万人も上回っている。
沿岸部を中心に進まない再就職。石巻職安の橋本昌夫統括職業指導官は「前の会社に戻りたいという人や同じような業種に就きたい人が多いため」と原因を分析する。
石巻職安の失業手当受給者の元の仕事を産業別にみると、水産加工などの食品製造業が約30%を占めて突出している。壊滅的な被害を受けた水産加工業の復興は遅れており、働いていた人が多い女性の再就職が進まない要因にもなっている。
政府は「手当に頼り失業期間が長期化すると、再就職の意欲が薄れる」などとして、震災特例で延長してきた失業手当の受給期間をこれ以上は延長しない考え。1月中旬から受給を終えた人が出始めており、3県では3月下旬までに最大で7100人が給付切れを迎えるという。
政府は基幹産業の復旧が遅れている状況も考慮し、月10万円の手当を受けながら職業訓練を受講できる求職者支援制度の活用なども促しながら、支援を強化する方針だ。
●[失業手当]雇用保険に一定期間以上、加入していた労働者が失業した場合に支給される。支給期間は年齢や離職理由などによって異なり、原則90~330日。東日本大震災の被災地では、最大120日間延長する特例措置が適用された上、被害が大きかった沿岸地域と福島第1原発の周辺地域に限り、さらに90日間の再延長も実施された。手当の支給額は年齢や離職前の賃金額などで決まる。
http://www.kahoku.co.jp/spe/spe_sys1071/20120205_01.htm
河北新報 2012年02月05日日曜日
協力:国際協力NGOオックスファム・ジャパン
URL:www.oxfam.jp