東日本大震災では、家族のつながりや絆の大切さがあらためて確認された。しかし、この一方で逆行するような現象が進行している。ドメスティックバイオレンス(DV)が増えていることだ。
その傾向は、もりおか女性センターの女性相談でも浮かび上がっている。2011年度(昨年4月~今年2月)に受け付けた相談件数は1786件。このうち、DVに関する相談が904件で全体の51%を占める。
前年度に比べて既に100件以上の増加。震災が色濃く影を落としている。同センターは「これまでは表に出ていなかった家庭内の問題が、震災を機に顕在化している」と分析する。
沿岸部の女性から寄せられる相談は深刻だ。夫が仕事を失い、次の働き口も決まらない。追い詰められたストレスのはけ口が、暴力という形で妻に向かってしまう。
避難所で我慢していたイライラが、仮設住宅に移ってから噴き出したケースもある。支え合いながら絆を強めた夫婦ももちろんいる。でも、狭い住居でいつも顔をつき合わせていることはDVの引き金になりやすい。
家が流されて、別居していた親族たちと一緒に暮らすようになった「震災同居」では複雑化する人間関係がトラブルの原因になる。
夫を失った女性は子どもを抱えながら夫の両親と同居しているが、生活を支えるために家を離れ、別の土地で働きたい。でも、親たちには家族の大切さを強調されて罪悪感に悩んでいる。
直接被災しなかった内陸部からも相談が舞い込む。キーワードは「震災後」。あれほどの大惨事があったのに、夫は全然助けてくれない。震災前と変わらない態度に疑問を持つ相談もあった。
震災は人々の意識を大きく変えた。新たなつながりを求める「震災婚」が増えたと言われたが、その一方で離婚も少なくない。
もりおか女性センターの田端八重子センター長は「震災が女性たちに与えた衝撃は大きい。自分を見つめ直し、別な生き方を考える人も出てきている」と指摘する。
復興の中で「絆」が強調される一方で、時には「つなぎとめる」「縛る」という本来の意味がむき出しになる。相談では、女性を家に束縛する言葉としてこの言葉が便利に使われることに嫌悪感を抱く声も多いという。
DVは大災害の度に繰り返される悲しい現実がある。災害は女性の自立を困難にするため被害から逃れられず、1人で悩む女性も多いに違いない。まずは相談窓口を周知するなど、復興段階に応じた対策を進めていきたい。
(2012.3.9)
http://http://www.iwate-np.co.jp/ronsetu/y2012/m03/r0309.htm
協力:国際協力NGOオックスファム・ジャパン
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