●『大槌町 保健師による全戸家庭訪問と被災地復興ー東日本大震災後の健康調査から見えてきたこと』明石書店
村嶋幸代・鈴木るり子・岡本玲子編著

保健師の方々延べ555人が大槌町で全戸訪問調査を行い(4/22〜5/8)、まとめられました。
この調査に基づく町への提言は第一報が5/7に行われています。

この全戸調査を呼びかけたのは、大槌町で28年間保健師を務められた、上記編著者の鈴木るり子岩手看護短大教授です。町の「復興まちづくり創造会議」のメンバーにもなり、提言活動もなさいました。

調査票は、町の依頼により設計者である大学教員に渡され(戻され)、学内の倫理委員会の承認を経て、厚労省からも助成を受けて、情報の整理と分析が行われました。その一部がこの本に掲載されているとのことです。

また、調査票、分析可能にした情報の入ったパーソナルコンピュータは、報告書(第二報)とともに、9/6、町に返却、寄贈されたとのことです(町職員には説明会開催)。

 

<メディアに掲載された関連情報>

「保健師125人、全戸訪問 自費で全国から集結、心もケア 岩手・大槌 東日本大震災」@朝日新聞 2011/04/24

津波で市街地が壊滅した岩手県大槌町で23日、全国から集まった保健師による全戸訪問が始まった。来月8日まで、125人の保健師が交代で各家庭を回る。全国の保健師による大がかりな支援は1995年の阪神大震災以来。
町内の避難所は、町職員や医療関係者が巡回している一方、町は、在宅被災者の健康状態や人数を把握できていない。同町は、約1割が死亡・行方不明に。震災前は約5千世帯が暮らしていたが、現在の世帯数は確認できていないという。このため、町は在宅被災者の健康状態に加え、暮らしぶりや家族構成も調べてもらい、調査結果を今後の生活支援に役立てる。
岩手看護短大の鈴木るり子教授(63)が社団法人「全国保健師教育機関協議会」(東京)などを通して、手弁当での参加を呼びかけ、23都道府県から応募があった。保健師は各家庭を2人1組で回る。
阪神大震災では、延べ約9700人の保健師が被災地で戸別訪問した。

●自費で全国から集結、心もケア

岩手県大槌町の金沢地区。市街地から西に十数キロほどの山あいにある小さな集落だ。23日、冷たい雨が降る中、黄色のベストを着た保健師が住宅地図を片手に一軒一軒訪ねて歩いた。
「こんにちは。お母さんいる?」。神戸市から来た保健師の岩本里織さん(41)が呼びかけると、ガタガタと引き戸が開いた。
自宅の縁側に座った佐々木タキさん(74)は神妙な顔つきでぽつりぽつりと話し出した。「声もぼんやり聞こえるし、体も動かなくなってきてて。人がいるとこさ行って迷惑かけるのも嫌だから、うちにいる」
かかりつけの医院が津波で流され、震災後に診察を受けたのは、近くの小学校に駐在する自衛隊の医師による1回のみ。岩本さんが血圧計の布を腕に巻くと、佐々木さんは「久しぶりだ」と笑顔を見せた。
別の保健師が訪れた民家。薄暗がりのなか、佐々木トキさん(78)はこたつに丸まって座っていた。
「ひざが痛くてねー」。白内障も患っており、残り少なくなった薬を気にした。
保健師らは自費で夜行バスやレンタカーで大槌町に駆けつけ、町内の農家の納屋で寝泊まり。寝袋も持参した。役所も診療所も被災してお年寄りらの記録がないため、急きょ調査票を作成して聞き取りし、治療の緊急度の把握に努める。
家庭訪問は山あいの集落から始め、津波被害がひどい沿岸部へと移っていく。東京から来た宮崎美千子さん(58)は、震災の精神的な影響を気にする。話を聞いている途中に余震で家が揺れると、今まで穏やかだった表情が一瞬でこわばった女性もいた。宮崎さんは「ゆっくり話を聞けるようにしたい」。心のケアも、今回の訪問の狙いだ。
岡山県の岡本玲子さん(50)は「町の深刻な状況が分かり、保健師魂に火が付いた」。鈴木教授は「被災者の代弁者として行政に実態を伝えたい」と話す。
(植松佳香、峯俊一平)

「東日本大震災/全国の保健師が健康状態を調査/岩手・大槌町の全世帯/東日」@河北新報 2011/04/26

東日本大震災/全国の保健師が健康状態を調査/岩手・大槌町の全世帯

東日本大震災で大きな被害を受けた岩手県大槌町で、全国から駆け付けた保健師125人がボランティアで町内の全世帯・避難所を訪問し、町民の健康状態や生活実態を調べている。
大槌町に住む岩手看護短大教授鈴木るり子さん(63)の呼び掛けで実現した。社団法人「全国保健師教育機関協議会」(東京)などを通じて保健師が集まり、町内の民家の小屋を拠点に5月8日までの日程で活動している。
24日は鈴木さんと北上市などの保健師12人が山あいの長井、金沢両地区に2人1組で入り、血圧を測るなど保健指導に取り組んだ。今後の町の保健活動に役立てるため、震災後の生活ぶりも聞き取った。
訪問を受けた主婦佐々木ヤスさん(71)は介護が必要な夫(73)との2人暮らしで、「話を聞いてもらうだけで気持ちが楽になった。本当にありがたい」と話した。体をいたわってくれる保健師との会話は心のケアにもつながったようだ。
大槌町は震災で町人口の1割強に当たる1735人(22日現在)が死亡・行方不明となった。約5000あった世帯の現状も分からない状態で、保健師の全戸訪問は町の実態把握にもつながると期待されている。(遠藤正秀)

「早急な対応必要」48人 大槌の全世帯、保健師が調査 東日本大震災 /岩手県」@朝日新聞岩手版
2011/05/10

保健師による大槌町の全世帯訪問調査の報告書がまとまり、避難生活で病状が悪化するなどした結果、48人に「早急な対応が必要」だとわかった。
同町役場は住民基本台帳を管理するサーバーが流され、約1万6千人の住民データが消失。在宅被災者の状況や世帯数も把握できない。鈴木るり子・岩手看護短大教授の呼びかけで、全国から保健師141人が手弁当で参加。4月23日~5月8日まで避難所や在宅の被災者計3728世帯を訪問し、健康状態や家族の安否を聞き取った。
「早急な対応が必要」な48人のなかには、停電、寒さ、低栄養を背景に、避難所で寝たきりの老人の褥瘡(じょくそう)が悪化し、災害医療チームに引き継いだケースもあった。「支援が必要」は228人、「経過観察」は286人だった。
表立った症状はなくても避難所では体を動かす機会が減り、食生活の偏りやストレスから高血圧や肥満、飲酒量の増加が目立った。失職するなど展望が持てず、生き残った自責の念などから心身に不調をきたす人もいた。自殺を図ったケースもあり、報告書は抑うつ状態の早期発見など自殺予防の重要性を指摘した。
住民データについてもまとめ、町内には8925人が暮らす一方、少なくとも694人が町外に出たことがわかった。15~19歳の町外流出が目立つという。地震前の住民基本台帳人口約1万6千人の33%にあたる約5300人は動向を把握できなかった。
鈴木教授らは7日、町役場を訪れ、東梅政昭副町長に避難所の環境改善や仮設住宅のバリアフリー化を訴えた。東梅副町長は「多角的な検証はありがたい」と話した。鈴木教授は調査結果について住民説明会を開く予定という。(机美鈴)

「大槌の行方不明者、952人から827人に減 東日本大震災 /岩手県」@朝日新聞岩手版
2011/06/14

大槌町は13日、町内の震災の行方不明者を952人から827人に大幅に減らして発表した。18日の合同慰霊祭を前に県警発表や保健師による全戸調査の結果と突き合わせ、重複や、生存確認された人を省いた。ただ、届け出もなく所在不明な町民が数千人あり、確定できる人数でないという。

 

「(ひと)鈴木るり子さん 岩手県大槌町で全戸訪問調査を呼びかけた保健師」@朝日新聞
2011/06/14

大津波の2日後、市街地が壊滅した大槌町にたどりつくと、自宅は跡形もなく、家の守り神だった伽羅(きゃら)の大木は無残になぎ倒されていた。「あなたならできるから、立ちあがって」。苦難に遭うたびに唱えてきた呪文をつぶやいた。
岩手看護短大の教授になる7年前までの28年間、この町の保健師だった。避難所を回ると、住民から「待ってたよっ」と声をかけられ、力がわいた。「生き残った人の命を守らなきゃ」
役場も被災し、予防接種やがん検診などの健康台帳は全て失われた。「全住民の安否と健康状態を把握して復興に生かしたい」。副町長に全戸訪問を提案。全国から141人の保健師らが手弁当で駆け付け、4月末から16日間、手分けして4187人を訪ね歩いた。
青森県の船大工の頭領の家に生まれ、北海道で保健師に。21歳で「開拓保健婦のドン」と呼ばれる大西若稲氏に出会う。最果ての原野で、家庭訪問から地域づくりを担った姿が理想だ。震災後、大西氏と写った写真帳だけが泥から出てきたのは、偶然とは思えない。
夫や3人の子どもは難を逃れたが、親族7人を失った。自らは大腸がんに脳腫瘍(しゅよう)、胸にはペースメーカーと満身創痍(まんしんそうい)。「私には時間がない。この仕事に命かけてますから」。真顔のあと、ガハハと笑った。「やりたい仕事を全部するには120歳まで生きなくっちゃ」
(文・生井久美子 写真・林敏行)

すずきるりこ(62歳)

「復興に保健師の力を 震災被害甚大 岩手・大槌町で健康調査 鈴木教授(岩手看護短大) 砥部で講演 医療サービス 仮設住宅改善 役場に政策提言」@愛媛新聞 2011/07/10

津波で街は壊滅、町長も死亡するなど行政機能が危機に陥った岩手県大槌町で、4月下旬から2週間かけ、全国から手弁当で集まった保健師141人が全戸訪問による住民健康調査を敢行した。同町の保健師を28年間務め、調査のリーダーとなった岩手看護短大の鈴木るり子教授(62)がこのほど、砥部町で講演し「保健師活動は住民との信頼関係の下にある。地域の復興へ、政策提言していかねば」と決意を語った。
津波に襲われた大槌町の中心部は、倒壊家屋約3600棟。死亡・行方不明者は人口の1割以上に当たる約1600人に上った。全戸調査は鈴木教授が副町長に直談判し、4月23日~5月8日に実施。町民の生死の確認と基礎データの作り直しが必要だった。
調査チームは農家の作業小屋で合宿。昼は家庭訪問、夜は記録整理を繰り返した。3728軒を訪問、1万758人の安否を確認し、震災前の人口約7割をカバーしたという。床ずれや認知症の悪化など緊急対応が必要な48人も発見し、治療につなげた。
旧知の住民や町職員と向き合い「家を失う絶望感、サバイバーズ・ギルト(生存者が感じる罪悪感)など、地域全部が被災したのと同じ」と鈴木教授。認知症発症の低年齢化や脳卒中、自殺者の増加などを懸念し、長期追跡調査を予定。「今やらないと住民の健康は守れない。私は保健師として住民の10年後に責任を持ちたい」と語った。
調査チームは復興に向けた医療・保健サービス、仮設住宅の改善策、雇用や交通手段の必要性なども提言書にまとめ、役場に提出。鈴木教授は保健師の役割を「住民の顔が分かり、人口構成、健康状態も知っている。担当地区を見ることは、政策を考えること」と解説した。会場の県立医療技術大で聴講した大学生らに「住民の味方になる専門職になって」とエールを送った。
調査に参加した同大の野村美千江教授(53)は「行政職はただ制度に乗っかってサービスを提供すればよいのではない。仕組みが根底から崩れたからこそ、住民の命と財産を守る役割を再認識した現場だった」としている。(高橋舞)

「大槌町の全戸健康調査まとまる /岩手県」@朝日新聞岩手版 2011/09/07

岩手看護短期大学の鈴木るり子教授らが5日、結果を町に提出。保健師らが4~5月に4952人を訪問した調査で、ほぼすべての世代に全国平均より血圧が高い傾向があった。健康の不調は被災者だけでなく、津波の影響を受けなかった山間部でも見られた。鈴木教授らは「被災者だけでなく、町全体として健康対策が必要」と訴え、精神的なケアを含む医療、福祉機関の充実などを提案した。

 

「保健師活動の在り方考える 松山で県研究集会」@愛媛新聞 2012/01/27

県地域保健研究集会(県など主催)が26日、松山市山越町の県男女共同参画センターであり、県や市町などで保健福祉活動に携わる約230人が意見交換。東日本大震災の被災地支援を通じ保健師活動の在り方を考えた。
被災地の宮城県南三陸町に入った高知県中央東福祉保健所の田上豊資所長が活動報告。避難所では全国から駆けつけた医療、看護職が短期間で入れ替わるため「現地の司令塔を支援する役割の人を決め、長期派遣のローテーションを組むことが円滑な支援につながる」と訴えた。
岩手県大槌町での全戸訪問活動に参加した野村美千江・県立医療技術大教授は「救護所の感染予防などは応援医師らに任せ、現地の保健師は(ヘルスニーズを把握する)地域診断活動チームに入るべきだ」と分析。行政の中枢が保健師による地域ローラー作戦の重要性を理解していないと危惧し、「家庭訪問できる力量を持った保健師が減っている」とも指摘した。(高橋舞)

「情報の輪つなぐ 被災地が求めるIT 健康・医療フォーラム」@朝日新聞デジタル
http://www.asahi.com/health/feature/forum120204_05.html
2012/02/21

コーディネーター・医療サイト「アピタル」平子義紀編集長

◆全戸調査を分析、命守る 保健師・鈴木(すずき)るり子さん

保健師の仕事は、どういうものかとよく聞かれる。保健所や市町村にいて病気を予防する仕事をしている。家庭訪問や健診、予防接種などを行っている。医師の指示がなくても保健師は家庭訪問できる。「来るな」と言われても、必要だと考えれば訪問する。
家庭訪問では、暮らしを見る。よく見るのは台所や部屋の中。鍋は使っているのか、カップラーメンがあるのか、どんぶりは1個なのか、酒の瓶があるのか。そうしたことが大事だ。
震災の後、4月23日から5月8日までの間に、私たち保健師は、岩手県大槌町の全戸調査をした。家が残っていた3728戸すべてを歩き、5117人に面接。安否確認したのが1万3935人で、全住民の86・8%をカバーした。
緊急対応の必要な人、床ずれがひどくなっている人もたくさん見つけた。津波で全壊した家と被害がない家が、そばに混在していた。被害のない人たちも罪悪感を感じて、生活に支障が出ていた。家があるから被害がないのではない。住民全部が被災者なんです。
大変だったのが記録の整理。延べ560人の保健師が連日、夜中まで作業を続け、まとめるのに3カ月かかった。高血圧の人が多かったので、これを何とかしなければいけない。入院するベッドや、心のケアのために精神科の外来も必要。そういうことを大槌町に提言した。
国の支援が進まない中で被災者はとても困っている。それを分析することが必要。だからこそ、ITは必要です。それを使って被災者を支援したいと思う。
保健師は、地域診断をしている。住民の健康データを持っている。例えば人工透析をしている人がどこに、どれくらいいるか、とか。災害が起きても、上空から被害状況がわかれば、医療機関へ運ぶ患者の数や食料の必要数を出せる。地区に責任を持って住民の命を守っている保健師だからできる。災害からの復興は長期間かかる。ぜひ、システムを開発して使いたい。

岩手看護短大教授。岩手県大槌町で28年間保健師を務める。大震災で市街地が壊滅した同町の全戸訪問調査を全国の保健師に呼び掛け、実現した

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