朝日新聞に掲載された記者による記事です。
————————————–
朝日新聞 2011.11.30 東京朝刊
「5月から求人を出し続けているが、なかなか集まらない」。東日本大震災で最多の4千人近い死者・行方不明者を出した宮城県石巻市で、中堅警備会社の幹部が嘆いた。
ハローワーク石巻管内の10月の有効求人倍率は0・61倍。全体では求人よりも求職者が多いのに、復興需要にわく一部の業種では人手不足が深刻だ。警備業の求人倍率は26倍、土木業も4倍近い。
経営者たちは「失業手当があるから人が集まらない。給付期間の延長なんてとんでもない」「支援物資や義援金が働く意欲を奪った」と言う。
だが、同じ石巻管内でも、一般事務の有効求人倍率は0・23倍、食料品製造業は0・40倍で、働き手にとって極めて厳しい。問題の本質は「就きたい職の求人がない」というミスマッチであり、そして見逃してはならないのは、その背景に潜む男女格差だ。
宮城県では10月、期間が限られない仕事の求職者が男性で前年より2・3%増え、女性は17・7%増えた。石巻管内で失業手当を受けた人数の増え方も、男性の5・2倍に対し、女性は6・2倍だ。
沿岸部の被災地の女性の雇用が厳しいのは、主な受け皿だった水産加工業が津波で壊滅したためだ。代わりに警備業や土木業で働けと言っても難しい注文だ。
さらに、一部で操業を再開した水産加工会社にも通えない人たちがいる。10月に再開した石巻市の水産加工会社の社長は「仮設住宅が遠い、車がない、海の近くで仕事をするのが怖いといった理由で従業員が集まらない」という。
震災前は「1人1台」だった車は津波で流され、1台買い直しても夫の通勤に使う家庭も多い。これでは、女性の就職先も、働ける時間も限られてしまう。
政府は、震災特例で最長210日間まで延ばした失業手当の給付期間を延長しない方針だ。だが、手当の打ち切りだけでは、就職を諦める人たちが増えかねない。法律上の「失業者」は減るが、何の解決にもならない。
国や自治体は、もっと女性に目を向け、仕事を探し、誘致し、通勤手段を考えるきめ細かい支援をするべきだ。各地で始まっている仮設住宅の見守り支援を職業紹介につなげるような取り組みも要る。
仕事は、収入とともに生きがいをもたらす。それこそ、被災地の復興に欠かせないものだ。女性が働こうという気持ちを失えば、被災地の活力はその分失われてしまう。
(仙台総局)
協力:国際協力NGOオックスファム・ジャパン
URL:www.oxfam.jp