「防災・地域力:女性が守る 災害時に力発揮「消防団」(その1) /熊本」@毎日jp熊本版
http://mainichi.jp/area/kumamoto/archive/news/2012/01/01/20120101ddlk43040136000c.html
今年は「防災」と「地域力」の年に--。東日本大震災を機に防災意識が高まるなか、住民同士が助け合う「地域力」の大切さが見直されている。少子高齢化でお年寄り世帯が増え、近隣住民の助けなしでは災害時の緊急避難が難しくなっているためだ。そんな今、地域力の象徴といえるのが住民でつくる消防団。東日本大震災の被災地では多くの消防団員がお年寄りの救助に力を尽くした。近年は男性団員が減っている代わりに女性団員が増えていて、女性らしいしなやかさと強さで地域を守り、住民同士の絆を深めている。「防災」の最前線で活躍めざましい女性消防団に焦点を当てた。【取違剛、結城かほる】
◇火災現場に出動--津奈木町女性消防団
「圧、全開よ!」。津奈木町女性消防団長、長浜良子さん(52)が後方で消防ポンプを操作する若手団員に指示を飛ばす。両手には男性団員が使うのと同じ直径65ミリの消防ホース。指示とともに放水の勢いが増した。「ゴーッ」という噴出音。長浜さんは班長の山口真由美さん(56)、松本弘子さん(51)らとホースをつかむ手に力を込めた。水力全開のホースは、男性でも2人で押さえられるかどうかという力がかかる。女性の細腕で狙いを定めるには日ごろの訓練が欠かせない。
長浜さんらは県内で唯一、全国でも珍しい火災現場に出動する女性消防団だ。いつどこで起こるか分からない火災に備え、放水訓練を兼ねた機械点検を毎月行う。現場さながらの緊張感のなか、早朝から小型ポンプ車を駆り、近くの平国川下流で練習を積む。
津奈木町の女性消防団は1951年、町北部の福浜地区の女性たちが結成した。福浜は八代海に臨む漁師町で、当時はイワシなどの地引き網漁が盛んだった。男性団員が出漁する日中に火災や災害が起きると地区を守れないため「おっ母(かあ)」連中が立ち上がった。現在は29~56歳の23人が仕事と家事との「三足のわらじ」で奮闘する。
ほとんどの男性が漁師仲間だった60年前と違い、今は町外での会社勤めや農業など職業が多様化する。地域の結束を保つのは昔ほど容易ではないが、そこを女性団員たちがつなぎ止めている。
「火事や台風の時は、そこらへんにおる人みんな使うとですよ。お互い知らん人はいないから」と副団長の長浜豊子さん(56)。出先で雨が降れば「うちの庭の洗濯物ば取り込んどって!」と電話し合える近所付き合いがあればこその業だ。どの家がお年寄りか、一人暮らしかも先刻ご承知。台風が来た時などは地区の区長や婦人会と連絡を取り合って避難させ、男女総出で土のうを積む。
男性団員と同じ現場に出動する以上、危険が伴う。昨年9月14日未明、ミカン山の倉庫兼作業小屋が全焼した火災など昼夜の別もない。小さな子供を抱える団員にとっては、子供を快く預かってくれる「ご近所さん」の存在がありがたい。「よその子もうちの子も一緒よ」。住民は口をそろえる。
「『地域』だからできる女性消防団です」と長浜さんたちは感謝する。地域のかすがいとなっている女性消防団は、同時に地域が育てあげた防災の力でもある。
◇操法競技全国準V--美里町女性消防隊
「誰か来てください、人が倒れています!」。傍らに意識を失った「傷病者」の人形が横たわる。講習会の参加者らは教わったとおり声を張り上げ、心肺蘇生とAED(自動体外式除細動器)操作の練習を繰り返した。
「心臓マッサージは胸部に力を集中して1分間に90回。『アンパンマンのマーチ』を歌いながらやるとちょうどいいです」。合間、合間にアドバイスを送るのは美里町の女性消防隊員たち。町民の要望に応じて随時、救命処置の講師を務めている。
美里町女性消防隊は19~57歳の30人。旧中央、砥用の2町が合併した04年、女性隊も合併した。救命処置講習のほか、一昨年は65歳以上の一人暮らし約600世帯を訪問して火災や災害があった時の「要救助リスト」を作成した。「皆さん喜んでくれました。『上がってお茶を飲んでいって』『大変だけど頑張って』と声をかけてもらって」と隊長の松本都々子さん(56)。1軒1軒に手作りのちょうちんをプレゼントするなど、女性らしいサービスが一人暮らしの不安を癒やした。
特筆すべき快挙は消防操法競技での活躍だ。隔年開催の全国女性大会で09年と昨年、2大会連続準優勝に輝いた。指揮者の森口千代美さん(48)ら選手6人の平均年齢は45歳。消火活動のスピードと規律、走力も問われる競技だけに若いスポーツ選手を「助っ人」に招く他県チームも少なくないが、堂々の成績を収めた。3月から本格的な練習を積み、6月以降は週3回、家族の夕食の準備を終えた夜にチームプレーを磨いた。
「こんな小さな町が全国準優勝なんてすごい」。大会後、松本さんは度々声をかけられる。2町合併から7年余り。合併した全国の自治体同様、美里町民の間にも「旧町意識」が残るが、女性消防隊の活躍が一体感と「わが町、美里」の誇りをもたらした。「今年も町の皆さんのために」と松本さん。その活動が地域をつないでいく。
毎日新聞 2012年1月1日 地方版
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協力:国際協力NGOオックスファム・ジャパン
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