被災地の復興計画や避難所・仮設住宅地の計画や管理に、被災者は勿論、とりわけ女性の参画が必要なことを主張し続けてきました。そうした中で、応急仮設住宅団地9か所中、女性管理人さんが7人いるという村があり、その女性管理人さんにお会いすることができました。福島県相馬郡飯舘村の仮設住宅です。

1月に冬の福島の原発事故被害者の避難状況、とりわけ女性の状況、木造仮設住宅とグループホームをみておきたいと過大な希望を出し、それを福島の女性建築士の菅野真由美さんがかなえて下さったのです。

菅野さんは福島県建築士会女性委員会の前会長で、NPOユニバーサルデザイン・結として、仮設住宅のバリアフリーを中心とする点検をなさっています。その活動の中で飯舘村の女性管理人さんに出会われ、今回私たちが訪問する労をとって下さいました。

福島県飯舘村は、震災・原発事故以前は「日本で最も美しい村連合」に加盟する、阿武隈山系にある自然豊かな美しい村でした。「手間隙を惜しまず」「丁寧に」「心をこめて」「時間をかけて」「じっくりと」と、心に響く意味をこめた“までい”な暮らしをスローガンに、村民あげて努力してきた村でもあります。それが眼に見えない放射能により汚染されたのです。

今年1月の人口は5911人、2005年の国勢調査では6722人でしたから800人以上減少しています。地震による死者は1名ですのでその大半は原発事故による避難です。飯舘村は福島第1原子力発電所から北西約約40キロ圏にあり、屋内避難区域より外側であったにもかかわらず高濃度の放射線量が測定され、全域が「計画的避難区域」に指定されました。飯舘村の人々は、深い無念な思いを懐に抱えながら、福島市内、伊達市、相馬市、国見町の応急仮設住宅地等の12か所に避難されています。

この仮設住宅地の自治会長さんは全て男性ですが(副会長さんの何人かは女性)、管理人さんは9住宅地中8か所に7人の女性管理人さんが“意識的に”配置されました(1人は2か所兼任です)。震災復興計画村民会議の副委員長として、仮設住宅管理人の佐野ハツノさんが入っておられます。

その背景には、もう四半世紀も前、1989年から5年間、村のお嫁さんたちをヨーロッパ海外研修に派遣する、“若妻の翼”という非常にユニークで画期的な取り組みがあったのです。封建的風土の中で、「若い」「女性」が村の中心舞台に登場し、参加した女性たちがさらに活発な活動を展開し、村を変えていったのです。

女性管理人さんのメリットは、何よりも「住民のお宅を訪問するときに、女性だと話をしてもらいやすい」「本音を聞き出せるので、我慢をしてもらわなくて済む」「女性からの要望が引き出せる」ことだということです。

「重い支援物資を運んだり処理したりする時」や、「喧嘩の仲裁や酔っ払いの対応」で困ることもあるのですが、自治会長さんや班長さんと共に対応しているそうです。応急仮設住宅に暮らさざるを得ない状況下では、多くの人々が「我慢」を強いられて暮らしていますが、女性たちの要求を出しやすい仕組みができているということは大変心強く、それが全体の居住環境を良くすることにもなると思います。

さて、この飯舘村の話をあるところでご紹介したところ、「普段から女性参画が行われていないと、災害時にあわてて女性の要求を出してもだめなのではないか」という発言がありました。勿論そうです。飯舘村では農村部の自治体としては珍しく、女性の活躍の場をつくってきたことが、震災時に女性管理人さん等の登場に結びつきました。日頃からの男女共同参画は大変重要です。

しかし、日頃から男女共同参画が行われていないから出来ないと投げてしまうのではなく、この震災を契機として、女性が参画することでよりよい地域づくりの実現ができることを確信し、女性が力をつけ、共同参画を推進してゆきたいと思います。

(2012年2月22日)

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