2月8~9日、東京都内で「災害とジェンダー トレーナー養成研修」を実施しました。一昨年12月に続く2回目の開催で、まれにみる大雪の悪天候にもかかわらず、両日で30人が参加くださり、2日間のすべてのプログラムを終えた19人の方に修了証を授与することができました。
今回の参加者も、女性の市民リーダー・地域リーダー、国際協力NGOのスタッフ、生協職員、女性関連施設職員、医療や建築などの専門職、防災コンサルタント、自治体の男女共同参画担当職員、女性議員、男性の研究者や大学院生と幅広く、東北の被災地や、中部・近畿地方からいらしてくださった方も。さらに今年度から連携しているピースボート災害ボランティアセンターが、各地で実施する災害ボランティア・トレーニング講座の初級・中級講座を受講し終えた方お2人も、ステップアップとして本研修を受講してくれました。
プログラムは後段の通りですが、今回は事前に『男女共同参画の視点で考える防災対策 テキスト 災害とジェンダー<基礎編>』の第7章を送り、地域防災に関する基礎知識を学んできていただいた上で研修に入りました。
講師は、主に研修プロジェクト担当の池田・浅野と、世話人の山下および政策提言担当の皆川が担いました(詳細は末尾参照)。
1日目の午前は、災害時に女性と男性とでどのように直面する困難に違いがあるのかと、国内でこのテーマがどのように認識され、政策的な取り組みが行われてきたのかについて学びました。
午後は、当ネットワーク世話人で岩手大学男女共同参画推進室特任研究員の山下より、被災地の女性たちが置かれている現状について報告。次に、防災活動に関わる際に欠かせない、災害時要援護者支援政策と、障害者・アレルギー患者・難病、妊産婦・乳幼児、少年・少女、外国人、性的マイノリティの方など、多様な人々の立場で災害時に予想される困難と対策の方向性についても共有しました。
初日の最後は、大雪による交通障害が予測され十分な時間を取ることができませんでしたが、災害発生時に起こりがちなジェンダー関連課題・多様な立場の人への対応上の課題などを学習教材にしたものを紹介し、地域での普及の際に役立ててもらえるようにしました。
(教材のテーマ例:多数の被災者のニーズの把握体制、避難所の間仕切り設置問題、アレルギーの人や障害者の方の支援方法、避難生活における外国人との共生など)
2日目はまず、災害とジェンダーに関する国際的な議論や取り組み動向と、国際的に活用されている人道支援の最低基準「スフィア・プロジェクト」について解説したのち、災害時の暴力事例と防止のための取組み、そして性的マイノリティの方たちの災害時の困難についても考えました。
午後は、災害時の避難所におけるトイレの設置や女性に対する暴力問題をテーマに、スフィア・プロジェクトを参考としながら、必要な対策について考えるワークショップを実施しました。
さらに、政策提言担当で東京大学社会科学研究所 特任研究員の皆川から、「東日本大震災以降の防災・災害復興政策とジェンダー平等の動向」と題して、震災直後からの男女共同参画局の動きや復興構想、復興基本法など政策の動向について、女性たちの動きとからめながら、また、自身の活動も交えつつ紹介しました。
最後に、災害とジェンダーに関連して実施されている、各地での参考となる取り組み事例を紹介しながら、地域における普及に際して、どのような点に留意したり工夫すべきかについて提起しました。
受講して下さったみなさまが今後各地で、ジェンダー視点による防災活動の推進役となっていただけることを期待しています。
<プログラム内容>
1日目
〔1〕災害と男女で異なる被災経験
〔2〕国内の取組み状況とこれから
〔3〕参加者の自己紹介と今後の取組みイメージ
〔4〕被災地の女性たちの今
〔5〕災害時の要援護者支援と多様性配慮
〔6〕ワークショップA(地域・市民普及編)
2日目
〔7〕国際動向と人道支援の国際基準
〔8〕災害時の暴力とその防止
〔9〕災害とセクシャリティ
〔10〕ワークショップB(スフィア基準活用編)
〔11〕東日本大震災以降の防災・災害復興政策とジェンダー平等の動向
〔12〕今後の普及に向けて~実践事例から考える
〔13〕まとめのディスカッション
<講師>
浅野 幸子(研修担当) 早稲田大学「地域社会と危機管理研究所」 招聘研究
池田 恵子(研修担当) 静岡大学教育学部・同大防災総合センター 教員
皆川 満寿美(政策提言担当) 東京大学社会科学研究所 特任研究員
山下 梓(世話人) 岩手大学男女共同参画推進室 特任研究員