東日本大震災女性支援ネットワークは、12月19日に小宮山厚生労働大臣に「被災地における女性向け雇用支援策の拡充のお願い」を提出しました。

2011年12月19日

厚生労働大臣 小宮山洋子 様

東日本大震災女性支援ネットワーク
共同代表 竹信三恵子/中島明子
連絡先:東京都文京区向丘1-7-8
TEL&FAX03-3830-5285

被災地における女性向け雇用支援策の拡充のお願い

東日本大震災の復興にあたり、政府・地方自治体は緊急雇用支援として多様なメニューを用意していますが、被災地の女性からは、なかなか職につけないという声が上がっております。12月11日の朝日新聞の一面によれば、岩手、宮城、福島の3県全体で、失業保険の受給者に占める女性の割合は、被災前の51・8%から58.1%と、7%も増加しています。女性は男性よりも、非正規雇用の割合が高く、雇用保険に加入していない状態で働いている場合も多いことを考えますと、男性に比べ、かなり高い割合で女性が失業していることが推測されます。このような状況の中、女性の雇用状況を改善することは急務と言えます。
そこで、女性に向けた雇用支援策の拡充をお願いするとともに、女性の雇用状況のさらなる改善のため、以下の通り厚生労働省に要望いたします。

一、震災後の女性の雇用状況を改善するため、女性に向けた雇用支援策を拡充すること

具体的要望項目
被災地の女性雇用に関し、具体的に下記のような対策が必要と思われます。各要望につき、善処をお願い申し上げます。

1.質の高い雇用の確保

配偶者や親を震災で失った被災地の女性たちは、安心で経済的自立ができる女性の仕事を望んでいます。良質な雇用が創出されないままでは、失業手当などに依存し続けねばなりません。被災地では、女性の雇用を提供してきた水産加工工場や、観光業が軒並み津波で壊滅状態になり、加えて、配偶者や親が亡くなって経済的な支えを失っている例が少なくありません。男性向けの雇用さえつくればなんとかなるとの従来型の発想の転換をお願いします。その意味からも、量としての雇用の確保ではなく、女性が就労しやすい質の高い雇用を確保するための施策を実施して下さい。また、被災地の最低賃金額は、全国でも最下位のグループに属します。そのため、被災地の最低賃金額を引き上げて下さい。

2.短時間でも安心して働ける安定的な雇用の確保

労働者派遣法改正案の審議の中で、政府から、震災で仕事が少ないときに規制強化はマイナスになるとの意見があったと聞きました。また、有期労働契約法の審議でも、経営側から、若者と女性と被災者の仕事づくりのために有期労働の規制は強化しない方がいいとの意見があったそうです。しかし、女性たちが求めているのは、雇い主と派遣先が異なり、職場での労使交渉も難しいような派遣労働でも、短期雇用でいつ仕事を失うかわからない不安定な有期雇用でもありません。短時間でも安心して働ける無期の良質の雇用が求められています。労働者派遣法や有期労働契約法を、震災や女性のニーズに便乗する形で、無期雇用を減らす方向で改正、実施するようなことには慎重であってください。

3.実践的、かつ多様な職業訓練の実施

パソコンの基礎を学んでも、それだけで仕事にはなかなか結び付きません。たとえば、パソコンの基礎とともに経理が学べるような、実践的な職業訓練や、女性が就労できるような多様な仕事の開発を促進して下さい。

4.育児・介護の負担に配慮した柔軟な働き方の実現

女性は被災下で、ますます家庭でのケア労働負担が重くなっており、家庭と両立できるような働き方のシフトが必要です。たとえば、福島県郡山市では、震災前、高齢で体力が落ちたことに見合って、一般の保育士が敬遠する土曜だけ8時間勤務という変則シフトを市に求めた臨時保育士がいましたが、震災と原発事故の混乱の中で3月末の契約満了を迎えてしまい、契約更新しないまま、仕事を失いました。市からは、変則的なシフトの用意がないとの回答がありましたが、むしろ、被災下でこそ、生活に合わせた柔軟な勤務で、女性が働きやすい仕組みをつくるべきです。こうした柔軟なシフトを可能にするための施策を実施して下さい。

5.緊急雇用における男女別統計の収集・公表

雇用創出基金が女性にも配分されるよう、配分先の男女別統計や、こうした資金を必要としている女性NGOへの情報提供をお願いします。

6.被災者に対する社会保障の配慮

義援金や全壊世帯への被災者生活支援制度が世帯単位で支給されるため、3世代同居となった母子家庭へ義援金などが渡らないなどの問題が指摘されています。給付等の世帯単位の見直しを行って下さい。また、震災時にも子どもにとっての大きな支えとなっている子ども手当を給付して下さい。

以上

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