東日本大震災女性支援ネットワークでは、全7回の連続学習会の成果として「DV・性暴力被害に関する政策提言」を作成しました。
災害時には、DVや性暴力被害が増加する傾向があり、平時の約3倍とも言われており、早急なDVや性暴力被害への対策の強化が必要です。

【政策提言】DVや性暴力被害への対策の強化(PDF)

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政策提言2

DVや性暴力被害への対策の強化(案)

 災害時には、DV(ドメスティック・バイオレンス)など女性に対する性暴力が増加する傾向にあることは、阪神淡路大震災や海外の震災の事例でも既に幾度となく指摘されてきている。
現に、東日本大震災後も、被災地からの電話相談では、夫から妻に対する暴力が増えているとの報告や、被災地の仮設住宅でDVによる殺人事件が起きたとの報道がある。

 今回の震災において、内閣府男女共同参画局では、被災地で女性に対する暴力を防ぐための措置を講じるよう地方自治体に依頼した他、被災者に対する暴力相談事業などを行っているところであるが、こうした被害者に対する支援、被災地における再発予防等の取り組みを継続・強化することもちろん、将来にわたり、再び災害時において女性に対する暴力が繰り返されることのないよう政府・地方自治体がともに取り組んでいくことが求められている。
 東日本大震災女性支援ネットワークは、DVや性暴力被害への対策として、以下につき政府・地方自治体に提言する。

平時における取り組み

1、教育機関において
各級教育機関で、暴力の被害者にも加害者にもならないための予防教育を実施すること

2、コミュニティにおいて
・ 自治会等地域組織での性犯罪・DV防止セミナー等を恒常的に実施すること
災害時、防災体制作りを担う地域リーダーが、性犯罪やDVについての正確な知識・情報を理解しておくことが、災害後の発生を防止することに役立つ
・ 自治体の防災マニュアルにも避難所や仮設住宅に女性のリーダーの配置を具体的な数字で盛り込むこと
女性の視点を入れる、女性の意見を反映させるなどの文言だけでなく、具体的な数値目標を明記することが実現可能性を高める上で必要である。

3、行政において
・ 市町村にDV相談支援センターを設置すること
・ DV防止計画を策定すること
・ 災害時における性被害・DV防止のためのマニュアルを作り、地域に周知・徹底すること

4、NPO・NGOの組織において、DV、セクシュアルハラスメント防止研修を実施すること

 
避難所における対策

1、 避難所の設計・運営に関し、性犯罪・DVを防止するための配慮を行うこと
・ 避難所の設置基準に、あらかじめトイレの男女別、トイレの周り等に街灯の設置、女性の着替え室、授乳室、希望する女性のための女性専用室、特別に擁護が必要な人のための部屋、乳幼児を連れた家族のための部屋などを盛り込んでおく。
・ 防犯ベル、相談電話や注意事項などが書いてあるカードの配布など、女性・子ども個々人に配慮が行き渡るようにすることが必要である

2、避難所の運営に女性が参加し、女性のプライバシーが保護でき、かつ性犯罪を防止する環境づくりを徹底すること
避難所マニュアルに、避難所のリーダーの3割は女性を配置すると具体的な数字を記載する。

3、安心して性犯罪や配偶者暴力に関する相談できる体制を作り、その周知を徹底すること
その際、障害を持つ人(特に目の見えない人、耳の聞こえない人)、日本語がわからない人への配慮を怠らないことが大切である

4、警察など関係機関意よる警備を強化すること
  全ての警察官を対象にセクシュアルハラスメント防止研修を徹底すること。
  性犯罪・DV防止セミナー等を恒常的に実施すること

5、避難所に女性のためのクリニックや助産師によるからだの相談を開設する。

 
仮設住宅・民間賃貸住宅等における対策

1、仮設の運営リーダーへのDV、セクシュアルハラスメント防止研修を早急に実施すること

2、仮設住宅・民間賃貸住宅等を含め、DVをはじめとする女性に対する暴力・児童虐待の相談窓口の周知等広報を行うこと
・ 被害への支援情報がチラシやテレビ、マスコミ報道などを利用して、被災地で幅広く広報されるようにすることが必要である。阪神・淡路大震災のときに民間団体ウィメンズネット・こうべが受けたDV相談の6割が在宅の女性からであったことを考えると、対象としては仮設住宅だけでなく、在宅、民間賃貸住宅の女性も対象とすることが重要である。
・ 民間支援団体が実施しているホットラインも含め電話相談の周知を行うこと。仮設住宅に公衆電話の設置する。

3、性犯罪が発生した場合、各自治体は、加害男性を別の住居に移動させるか、もしくは被害女性が希望すれば別の住居に移動できるような対策をとること。被害女性と同伴する家族への住居の提供(県外をふくむ)と自立できるまでの経済的支援を各自治体の責務とすること

カリフォルニア州ロマブリエタ地震の調査報告(1990年5月)によれば「災害による失業や家財、家の喪失は多くの女性にとって選択範囲を狭めることになる。非常に虐待の危険性が高い状況におかれても、ひとりで経済的に生き延びていける能力があるかどうかの不安は、女性が住みなれた環境を抜け出すことを通常以上に困難にした。」とある。既に仮設住宅におけるDV殺人事件が8月19日(時事通信2011年8月19日報道)に発生している。三世代同居が多い地域では、親が息子の暴力の激化を抑止していた状況があるが、今回の災害によって世代が別々の仮設住宅に入居することで抑止力がなくなったとも聞いている。DV被害者が暴力から逃れるには、まず安全な住居の確保が必要である。

 
復興過程における対策

1、 復興時の街で、性犯罪の発生を防止するため、「女性にやさしい街づくり」の観点から復興を進めること
 復興事業として、犯罪防止のため速やかに防犯灯の復旧工事を行ない、街を明るくして人々を犯罪から守る。女性を性被害から守るために見回りを増やすなど特別警戒することを盛り込むべきである。

 *阪神淡路のときに、女性団体が震災で倒れた街灯を速やかに復旧することを県警に要望したが、街灯は自治会が管理しているとのことで対応してもらえず、会社や学校からの帰宅途中など、数ヶ月間、街が暗いため不安を感じる女性は多かった。(1995年5月に兵庫県警に対して県内の女性団体が連名で性犯罪の被害者対策について申し入れを行っている)

2、性暴力被害者が責められずに訴えることができ、支援を受けられる制度を充実すること
・ 各都道府県に1箇所は、ワンストップセンターを設置し、女性が責められることなく、安心して訴えることのできる環境を整備すること。
・ 性犯罪において、女性が2次被害を受けることのないように、その後の医療や法的サポートへのつきそい支援などを民間団体に委託し、制度として公費で利用できるようにすること。

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