●NPO法人インクルいわて理事長 山屋理恵

 

 7 月1 日、盛岡市のアイーナにおいてNPO 法人インクルいわて主催「ひとり親支援を考える」と題したシンポジウムを開催いたしました。

 インクルいわては東日本大震災を機に結成された、ひとり親家族の支援団体です。メンバーは震災以前からそれぞれの支援現場でひとり親家族の抱える問題、生きづらさを肌で感じ、実際に支援してきました。

 東日本大震災は社会的排除リスクが極めて高く、声を上げにくいひとり親家族の厳しさをあぶり出し、さらに新たなひとり親家族を生みだしました。

 その後の復興格差は震災前の状況に比例しています。そこで私たちは今この時にこの問題と向き合い、社会的包摂の理念を持って「当事者と共に歩いていくこと」を共通認識にしたいと考えました。

 まずは、サロン、インクルフェアを開催し、被災した当事者につながり、次には支援者や行政、民間の団体、そして地域の方々とつながれるようシンポジウムを開催しました。盛りだくさんの内容で、岩手初の試みでした。

 基調講演は 阿部彩さん(国立社会保障・人口問題研究所)から「ひとり親家族の現状:震災、貧困、社会的排除」と題してお話をいただきました。ひとり親家族の孤立と貧困問題は震災以前からあり、国際比較や、貧困問題が子供期に及ぶ影響を具体的データで示されました。被災地は復興バブル後他地域よりも経済が低迷することや、震災後の復興感が3 年後から再び下降し、二番底が来ること、こうした状況下で社会的弱者が震災弱者となってしまい、その方々がいかに復興のメインアクターとなりえるか、そしてインクル―シブな復興を目指すことがカギだと話されました。

 

●震災後厳しさが増す、ひとり親家族の問題に向き合う

 次に5 人のパネリストから続けてお話をいただきました。

 まずは岩手県保健福祉部児童家庭課長 菊池秀樹さんから岩手県のひとり親家庭の状況と取り組み、震災の影響と課題について、行政の立場からお話をいただきました。

 次に当事者団体の報告として母子家庭の当事者団体である「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」赤石千衣子理事長から先駆的に行ってきた母子支援と東日本大震災の被災者支援について、父子家庭団体「宮城県父子の会」代表村上よしのぶさんからは、父子世帯の公的支援が乏しいこと、母子家庭同様、家事・育児に追われて疲弊していること、社会から孤立していることが問題であること、宮城県での被災者支援についてお話をいだだきました。

 子ども支援の現場からは 盛岡で無料・低額診療事業を行っている川久保病院小児科医師の小野寺けい子先生が医療現場からみた子どもの問題を歯科・口腔問題、無保険、予防接種の未接種問題などの事例を挙げ貧困問題について話されました。

 そして、インクルいわて代表 山屋からは、団体設立の経緯とビジョンとミッション、今後の取り組みを話しました。

 全国から100名を超す方々が参加くださり、ひとり親家族の現状と、復興に必要な支援を様々な立場の方々が共に考える貴重な機会となりました。

 次はいよいよ、サポーターを増やし、ひとり1人のニーズにあわせた個別の生活支援パーソナルサポートサービスを主軸とした包括的就業支援事業を開始し、岩手のひとり親家族支援を展開していきます。

 このシンポジウムでつながった方々、これまでつながった方々、これからつながる方々と、小さくても包摂の輪を確実なものとして広げていき、インクルモデルを作っていきたいと思っております。

 日本社会の課題が凝縮されているひとり親家族の包摂を目指す取り組みは誰にとっても有効で、生きやすい社会を目指す取り組みです。ぜひ今後とも応援してください。

 このシンポジウムを機に全国のたくさんの方々からメッセージをいただきました。遠く離れていても近くに感じられるあたたかい言葉のひとつひとつに支えていただき活動していきます。本当にありがとうございました。また、ひとり親家族のみなさま、支援者のみなさま等多くの方に読んでいただきたいと思います。ぜひインクルいわてのブログをご覧ください。

 

■NPO法人インクルいわて
ブログ:http://incluiwate.blog.fc2.com/
〒020-0875 岩手県盛岡市清水町5-21
TEL:080-2827-3213
E-mail:inclu.iwate@gmail.com

※「かだりば通信 8月」に掲載された記事です。

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