東日本大震災女性支援ネットワーク

国・自治体の「防災計画」への提言

2012年7月10日

 

① 防災政策への女性の参画保障と、性別・多様性の視点の確実な導入
② 「総合的」防災・支援対策の構築
③ 災害時要援護者支援のあり方について
④ 物資供給
⑤ 避難所対策
⑥ 在宅避難者支援
⑦ 障害者支援
⑧ 乳幼児・妊産婦・母子支援
⑨ 女性・子どもの安全対策
⑩ 外国籍住民など外国人支援
⑪ 性的マイノリティ支援
⑫ こころのケア対策
⑬ 原子力災害対策
⑭ 仮設住宅(みなし仮設含む)・生活再建・復興まちづくり
(→⑭ は「復興計画・復興政策に組み込むべき提言」を参照のこと)


 

① 防災政策への女性の参画保障と、性別・多様性の視点の確実な導入

1.防災政策は、すべての人の人権への配慮を基本とし、すべての事項を通して人権尊重の視点を取り入れるものとすること。

2.防災政策の決定過程に女性が参画できるよう、制度化すること。
*国および自治体の防災会議に、女性委員が最低でも3割入るよう条例等で位置付けること。
*特に女性の医師、看護師、保健師、助産師、カウンセラー、ソーシャルワーカー、栄養士、保育士、建築士、都市計画家、教員など、暮らしにかかわる女性専門家が参画できるようにすること。
*防災政策を検討する際、各部局の実務を担う行政職員に必ず女性が含まれるようにし、女性・生活者の視点が反映されるようにすること。

3.自治体の男女共同参画担当部署ならびに、女性センター・男女共同参画センターを、災害支援の重要な部門・機関として防災計画に明確に位置付け、その主たる業務についても明記すること。ただし、災害時の実務については、柔軟な取り組みを可能とすること。

4.地域の実情に応じて生活者の多様な視点を反映した防災対策の実施を可能とし、地域の防災力を向上させるため、自主防災組織の責任ある地位に必ず女性が含まれるよう定めること。また、地域における防災対策は、世帯主のみならず、女性や子どもや地域を構成する多様な個人の意見を聞き、協議したうえで策定実施すること。

5.避難所(指定されていない中小規模の避難所も含む)および被災地外に避難した被災者の、男女別・年齢別・障害の有無別の状況把握を必ず行い、把握された情報を支援活動に活用するよう定めること。

6.災害時要援護者支援については、年齢や性別、障害の種類等、災害時に実際に直面する現実を考慮して、より現実的・効果的な支援につながるよう見直すこと。
その際、当事者の声が反映されるよう、障害者(多様な障害を持った人と、特に女性障害者を含む)、外国人(女性含む)、妊産婦や乳幼児がいる母親などからも意見を聞くこと。

7.あらゆる防災関係者が、災害対策上、女性・子ども・障害者の多様性・外国人等の視点が重要であることを認識し、防災政策立案・現場対応にあたって不可欠な知識を得ることができるよう、研修を受ける機会を設けること。
(自治体職員、消防、警察、教職員(公立・私立・高校・専門学校・大学含む)、医療・福祉関係者(助産師・リハビリ・介護職・ソーシャルワーカーなどを含む)、NGO/NPO・障害者団体・子育てやDV支援団体等の民間団体、地域組織など)

8.総務省の自主防災組織向け手引きや民間の災害関連資格など、人材育成を行う教材において、防災における女性の参画の重要性、男女双方の視点、特に人口の半分を占める女性の被災実態と必要な対策、女性・子どもの安全対策、障害の種類と支援に求められる配慮項目などについて、必ず盛り込むようにすること。

9.企業の防災対策、事業継続計画(BCP)に、女性・子ども視点を必ずいれ、対策を考える際に必ず女性が参画するよう、手引きの作成もしくは、既存のマニュアル等に記載すること。

 

② 「総合的」防災対策・支援体制の構築

1.市町村の防災計画策定にあたっては、特に生活関連分野や災害時要援護者支援において、市町村の担当部署を示すのみならず、関係機関として、防災機関や都道府県の担当部署、NPOや民間団体、事業所、大学などの高等教育機関など、災害時に実際に協力関係を必要とする主体を書き込み、できるだけ対策に必要な達成目標も具体的に示すこと。
(参考:長岡市防災計画 http://www.bousai.city.nagaoka.niigata.jp/

2.高齢者、障害者、乳幼児・妊産婦、子ども、女性支援については、都道府県の担当部局や専門機関との連携体制の構築と、分野間で横断連携することで、効果的な支援へつなげること。
小規模自治体で、体制が十分取れない場合でも、都道府県との連携体制を取ることで、専門的相談・支援が実施できるようにすること。

3.被災者が迅速に各種手続きを行って公的支援等を受けられるようにするのと同時に、被災自治体の枠を超えて避難した場合でも、多様な支援と情報提供を継続的に受けることができるよう、被災者台帳システムを構築し、その活用方法について防災計画で定めること。

4.災害の被害は、災害以前の社会構造の歪が顕在化する形で顕れる。防災対策の策定実施過程が、これらの課題―生活者としての課題、とりわけ脆弱な立場にある人々・女性・災害時要援護者に関わる課題―を積極的に解消する方向性を持つか、少なくとも課題を悪化させないことを確認しながら行われるよう、防災計画にしっかりと書き込むこと。

5.わが国には、海外の巨大災害の救援や復興支援の経験が豊かな民間国際協力団体が多く存在する。中には日本の地域に本部支部を置き活動している団体も多い。これらの団体は混乱した状況下における情報収集、情報把握、団体間連携調整などの面で豊富な技能と経験を有する。これらの団体の役割を国の防災計画において正式に位置づけるべきである。

 

③ 災害時要援護者支援について

1.災害時要援護者については、年齢、性別、障害や病気の種類と程度によって配慮すべき点が異なる。それぞれの特性を踏まえ、どのような配慮が必要かについて防災計画に明記すること。

・乳幼児・妊産婦 = 乳幼児は月齢でも、また妊婦は初期か安定期後か、出産前後か
などで違いが大きい(⑧を参照のこと)
・障害者     = 性別、障害の種類や程度により配慮すべき点や必要な物資が違う
(⑦を参照のこと)

2.市町村においては災害時要援護者支援を一元化して担当窓口間の連携体制を構築し、関係機関・団体を協力先として位置づけること。行政や医療・福祉機関・福祉事業所等はもちろんのこと、障害者団体、子育て支援団体、幅広い市民団体との連携を前提に組み立てること。
都道府県においても、要援護者に関しては、各分野横断的に連携して支援に取り組むこと。

(例:神戸市地域防災計画「第9章 災害時要援護者・外国人の支援・男女双方の視点への配慮」
http://www.city.kobe.lg.jp/safety/prevention/plan/guide/g-index.html
災害時には保健福祉部が災害時要援護者支援本部を本庁内に開設し、関係各所と連絡を取りながら、福祉ニーズ等の情報を一元化し円滑な救援につなげる。各区役所にも災害相談センターを開設。保健福祉部は児童相談所に児童の心の相談窓口を開設し、学校とも連携。災害時要援護者に対する情報提供については、障害者団体を含む幅広い民間団体とも協力して進める。男女共同参画課は女性のための相談窓口を開設し、男女共同参画センターと連携して相談支援にあたる。)

3.災害時要援護者の支援にあたっては、個人情報の共有と支援体制の在り方が重要となるため、以下の取り組みを進めること。
*災害直後だけでなく、避難生活・生活再建期の支援の必要性についても、要援護者本人の同意を得て登録する仕組みを作り、その名簿については、民生・児童委員、地域組織等だけでなく、社会福祉協議会(災害時には行政とともに災害ボランティアセンターを立ち上げることになっているケースが多い)、福祉施設、病院、NPO・NGO等のボランティア団体などと共有できるようにしておくこと。
*ただし、個人情報の取り扱いについては慎重を期し、取扱いルールを明快に定めること、情報共有団体は、協定を結び責任の在り方を厳密に定めるなどの仕組みも併せて作ること。開示することによって被災者に利すると予想できる場合には、名簿の記載やその共有をされたくない人の意思を確認・尊重した上で、名簿記載とその名簿の共有、場合によっては一部開示などについて十分に検討し、現在よりも柔軟に対応できるように準備しておくこと。

ただし現実には、地域の担い手不足等による災害直後の支援の厳しさ、登録による安心感で要援護者世帯における備えが手薄にならないようにする必要性(室内安全化や備蓄など)、要援護者の誘導により津波で命を落とした多くの消防団員・自治会関係者・行政職員の存在について指摘されているように、どこまで責任を課すのかという厳しい課題も抱えており、今後も要援護者対策については幅広い議論が必要である。

<対策の現状>
災害時要援護者の個人情報の共有についてはすでに、個人情報保護条例を改正の上、本人の希望・同意を得て災害時要援護者の登録を行い、その名簿を自治体の福祉・防災担当部局等と、民生・児童委員、自治会・自主防災会等で共有できる仕組みづくりが全国で進められている。さらにこの名簿にもとづいた、要援護者一人ひとりの支援プランの作成が期待されているが、現実にはプライバシーの問題、高齢化による要援護者の増加、地域組織自体の高齢化等による担い手不足で、取り組みはなかなか進んでいない。

4.避難所となる施設が、日常から誰でも使えるよう、バリアフリー化・ユニバーサルデザイン化を進めること。多目的トイレを最低1か所は設けること。

5.在宅避難生活を送る災害時要援護者支援について、政策的に位置付け、関係者の協力を得られるようにしておくこと。 (④・⑥を参照)

6.高齢者のみ世帯、障害者のみ世帯の場合、とりわけ家具転倒防止器具の設置や大型家具の移動などの室内安全対策化を積極的に進めること。そのためにも、当事者への情報提供と市民団体、地域団体の協力を得ること。

<災害時要援護者の厳しい被災実態>
災害時要援護者は、避難所にそもそも行くことができない、避難所に行っても入ることができない(バリアフリーでない)、避難所での生活が継続できない(設備上の問題、周囲への気遣い、不衛生な環境で病気になる可能性が高まるなどの諸要因)、在宅避難生活を送っていても食事や物資等の支援がない、という厳しい状況に置かれてきた。

 

④ 物資供給

1.乳幼児、妊産婦、女性、要介護者、障害者等が必要とする物資・特別食等(特に保健・衛生・医療に関わるもの)は、病院、保健所、福祉事業所、男女共同参画センター、助産師会、看護協会・子育て支援NPOやDV被害者支援団体などの民間団体等、あらゆるルートで配布がなされるよう、事前の協力体制づくりと、柔軟な取り扱いを明記すること。

【女性・子ども・障害者・高齢者が早期に必要とする物資】
・生理用品、おりものシート、ウェットティッシュ、携帯用ビデ など
・調製粉乳、哺乳瓶、小児用おむつ、おしりふき、離乳食、スプーン など
・成人用おむつ、介護食、生活習慣病対応食、アレルギー対応食、
ストーマ用装具、気管孔エプロン・酸素ボンベ等の補装具 など
・ポータブルトイレ、車椅子、簡易ベット など

【体調・健康維持のために必要な食料】
野菜・果物ジュース、タンパク質系の缶詰やドライフーズ、高齢者向きのやわらかな保存食など

(※参考:全国知事会 男女共同参画特別委員会・災害対策特別委員会による、「女性・地域住民からみた防災施策のあり方に関する調査報告」も参考とした(平成20年12月)。
全国の市町村・都道府県へのアンケート調査を実施し、女性・災害時要援護者の視点に立った対策がどの程度取り組まれているのかについて詳細に報告している。
http://www.nga.gr.jp/news/2081219.PDF )

2.市町村は、都道府県との連携備蓄を含めて、これらの物資の備蓄を進めるほか、医療機関や福祉施設、大型スーパー等と協定を結び、支援に必要な物資を常に多めに在庫としてストックし、いざという時に地域の災害時要援護者に優先的に提供する仕組みを作ることも検討し、対応力を高めること。

<大規模災害時の水・食料・物資供給の現実>
大規模災害では食料・物資の供給が安定し始めるのに、1週間かそれ以上かかっており、中でも災害時要援護者とその家族、女性が必要とする個別ニーズへの対応が難しく、当事者と家族が大変な困難を強いられることとなる。

 

⑤ 避難所対策

1.住民・行政・施設管理者による、避難所運営委員会/連絡会などを日常から設置し、施設の使用方法と運営ルールについて話し合い、避難所開設・運営マニュアルとして明文化すること。
マニュアルの策定の際には、女性・子ども・障害者(タイプ別)・高齢者の意見を必ず聞くこと。マニュアルは、訓練や会議のプロセスで定期的に内容を見直し、改定を行うこと。

2.避難所運営委員会/連絡会等の組織には、必ず女性が一定割合(3割以上が望ましい)入るようにし、人口の半分を占める女性のニーズと、生活者の視点が、避難所運営マニュアルと実際の運営に反映されるようにすること。

3.避難所の生活環境ができるだけ早期に一定の水準に保たれるよう、マニュアルに明記しておくこと。

 

【避難所開設・運営マニュアルに入れるべき項目】
* 男女別の要援護者・虚弱者のための優先スペース
* 女性の着替えや授乳等が可能なスペース
* 男女別の仮設トイレの設置
* 女性用トイレ割合を増やすこと
* 多目的トイレの確保もしくは設置(障害者や要介助者優先)
* 間仕切りの準備と早期設置の努力
* 女性専用の洗濯物干し場の設置
* 子ども専用のスペース(遊び場や学習の場)
* 盲導犬・聴導犬・介助犬は、身体障害者補助犬法に基づき対応するよう規定し、障害者のそばにいられるようにすること
* ペットの扱いについて決めること
* 物資の管理方法
* 女性用物資の配布方法・女性による配布体制づくり(保管場所・担当など)
* 女性・子ども・障害者などの個別ニーズ・意見の把握体制と改善方法
* 女性・子どもの安全対策と、治安関係相談窓口情報の個別被災者への提供
(関係者の名札や腕章の用意、照明の確保や設置位置、トイレの安全性確保、
暗がりや地下などの犯罪が起こりやすい場所の立ち入り禁止措置、
女性用トイレに警察やDV相談窓口などの相談先情報を貼りだしておくなど)
* 衛生管理方法と清掃の分担(男女問わずできる人が分担し、負担を集中させない)
* 避難者のための食事の準備(炊き出し)の分担(男女問わずできる人が分担し、負担を集中させない)* 感染症患者の療養スペース(インフルエンザ・感染性胃腸炎など)
* 在宅避難者(特に要援護者)への水・食事・生活必需品の提供方法
(自宅の備蓄が基本だが、要援護者は給水の困難、調理の困難に直面するため優先的支援が必要。また、長期間にわたり生活インフラが回復せず、近隣商店での商品供給が難しい場合、要援護者以外の在宅避難者からの食事・おむつやミルクなどの生活必需品のニーズにも、応える必要が生じる)
* 避難者カードの作成・印刷・保管と、個人情報の取り扱いルールの周知徹底。
(大規模災害時にはコピー機や印刷機が使えないことが予測されるため、名簿は事前に作り、印刷して取り出しやすい場所に保管しておく。名簿には、外部からの問い合わせに対して、氏名を公表してよいかどうか確認する欄を設け、公表を望まない場合は、避難所名簿の貼り出しを控える・問い合わせに応じないという対応を確認する)
* 総合的な避難生活・生活再建関連の情報の提供について
(特に高齢者や障害者、外国人が情報面で不利益を被らないよう工夫する)  ほか

(参考:避難所の運営体制・環境配慮については、横浜市防災計画が充実
http://www.city.yokohama.lg.jp/shobo/kikikanri/keikaku/keikaku.html

<避難所生活の現実>
※1名~数名の自治体職員による被災者の対応には無理がある。事前のルール決めをもとに、被災者による自主運営が早期に成立するように促し、自治体職員は医療・福祉・心のケア等の専門支援との調整などに携わることができるようにすべきである。
※過去の大規模災害でも、インフルエンザや肺炎、心疾患等により避難所生活で多くの人が亡くなっている。感染症の抑制やプライバシーを確保するには、混雑を緩和させるため、自宅が無事な人については、自宅に戻っても生活できるよう、避難所へ食事や生活必需品を取りに来られるよう仕組みを作った上で、自宅へ戻るよう促すことも視野に入れる必要がある。

4.福祉避難所についても女性専用スペースを設け、希望する要援護者に提供できるようにすること。

5.学校・福祉施設・避難所となりうる公共施設の耐震化率100%を早急に達成するため、具体的な計画を策定すること。

6.避難所となる施設の使い方や耐震化を検討するにあたっては、まず、バリアフリー化・ユニバーサルデザイン化を進め、多目的トイレを最低1か所は設置すること。また、マンホールトイレの設置・仮設トイレの備蓄を進め、救急車両の出入りが可能かどうかなど、施設利用の実際について具体的に点検すること。

7.指定避難所以外の、地区集会所等の中小規模の避難所には、食事や物資が十分に届かず、特に交通の便の悪い地域では生活に窮するケースも生じた。避難生活が長期化した場合、指定避難所を中継基地として、中小規模の避難所に物資が届くようシステムを構築し、被災者自身がとりにいく、またはボランティア団体等との連携により物資を届けるといった対応が、速やかにできるようにすること。

 

⑥ 在宅避難者支援

1.災害時要援護者は、避難所に行くこと自体困難な場合が多い。自宅の安全性が確認できた、妊産婦、乳幼児、要介護者、障害を持つ人とその家族などについては、移動の困難や、避難所生活によって体調の悪化や周囲への気遣いによる疲弊が考えられる場合、在宅避難を重要な選択肢として公的に位置付けること。

2.避難所は、地域支援拠点とし、食事や必要な物資について、近隣の人も等しく受け取ることができる、と政策的に位置づけること。
ただし、無償による食事や物資の提供の継続が、周辺で再開したり復興した商店や飲食店の経営を圧迫することもあるため、地域の復旧・復興状況に十分配慮すること。

3.行政の支援と地域防災活動に在宅避難者支援を位置づけ、特に要援護者に関しては、地域組織・民生委員・ボランティア団体・事業者を含めて(障害者団体・福祉事業所も)、相互に連携しながら、効果的な支援をおこなえるよう備えること。

4.自宅での備蓄が基本であるが、長期間にわたり生活インフラが回復せず、近隣商店での商品供給が難しい場合、要援護者以外の在宅避難者からの食事・オムツやミルクなどの生活必需品のニーズにも応える必要が生じる。
過去の大規模災害では、物資の供給が安定したにも関わらず、生活に窮した在宅避難者が避難所に食事やオムツ等を貰いに行ったところ、避難所生活者ではないということで断られ、トラブルになったり、厳しい避難生活を続けざるを得ない事態も生じた。同時に、地域組織とリーダーたちの判断で、在宅避難者にも公平に物資を配布した例もある。こうした混乱が生じないよう、段階に応じたルールを示し、在宅避難者の適切な支援が行われるようにすること。

 

⑦ 障害者支援

1.障害の種類は多様であることを防災計画に書き込み、とりわけ女性障害者は災害時に、より多くの困難に直面することを意識して、必要な対策を講じること。
また、避難所運営関係者・地域住民・市民団体とも必要な対策について情報を共有すること。
(例: 肢体不自由・視覚障害・聴覚障害・知的障害・精神障害・内部障害)

2.避難所等において障害のある人に共通して望まれる支援を下記に引用したが、こうした配慮項目を考慮して、備蓄・避難所整備・支援体制の構築を進めること。

【引用】 「避難所などでの障害がある人への対応」の2ページ目
(日本語版 http://bit.ly/hn2T3K
東日本大震災直後、避難所などでの障害がある人への基礎的な対応を、障害別のニーズに基づき、わかりやすくまとめたヒント集で、DPI女性障害者ネットワークが発行したもの。

1) 移動しやすい環境の整備(段差の解消、通路の幅の確保、障害物を置かない等)が必要。
2) 車いすが通れる通路(直線で)の幅は90cm 以上必要。
3) 案内所・物資配布所・トイレ等の表示は、大きい表示板・色別テープなどでわかりやすく。
4) 集団生活に適応しにくい人々には二次的避難所を設ける。
5) できるだけその人の事情が分かっている人と共に過ごすことができるような配慮。
6) 盲導犬、聴導犬、介助犬は、使用者の移動や生活にとって、必要なので、使用者とともに避難し、避難所内で一緒にすごし、必要な食事や給水を受けられるようにする。
7) 混乱の中で支援が効果的に実行できるよう、障害当事者及び支援者(介助/介護者)は分かりやすい名札などで識別・表示も考えられる。ただし表示を希望しない人へは強要しないように。
8) 情報伝達機器のうち、テレビは「字幕付き」、電話は「ファックス付き」を設置する。
9) トイレには「手すり」等を取り付ける。
10) 大人用紙オムツ、尿取りパットは、各サイズ別に多く備える。
11) 非常食として「おかゆ(パック用)」を用意する。またトロミ剤、ストローを用意する。
12) 簡易な医療器具を設置する。(酸素吸入器及びボンベを設置する)
13) 避難生活の中でのトイレや着替え等女性のプライバシーを確保し、安全対策をとることが必要。
14) 避難生活のなかで性暴力がおこるおそれがあり、とくに障害をもつ女性は暴力から逃れるのが困難なことがある。性暴力の防止対策、被害があった場合の相談・支援体制を用意する。

 

⑧ 乳幼児・妊産婦・母子支援

1.妊産婦については、避難所内での配慮はもちろん、近隣の宿泊施設等に優先的に入ってもらえるよう事前に協定を結ぶ、被災地外へ避難させるなどの仕組みのほか、医療機関にすぐ繋げられるよう、日常から体制を構築すること。

2.新生児・乳児は月齢によって必要なケアや支援がちがう。幼児も年齢・個人によって発達度合いとケアすべき点が違ってくることを前提に、細やかな支援計画を組み立てること。

3.妊娠初期は見た目でわからないため、避難所運営関係者や保健・医療関係者が、遠慮なく本人や家族から配慮を申し出てもらえる機会を設定すること。

4.子どもの心のケア対策・母親のメンタル支援を行うこと。

5.災害前後に出産した場合、生活再建問題や仮設住宅での生活などを、慣れない育児と両立する必要が生じるため、育児ノイローゼ防止など、長期的視点でのメンタル支援を実施すること。

6.医療機関・保健所はもちろんのこと、保育所、幼稚園、児童相談所、男女共同参画センター、子育てNPO等とも連携関係を構築し、多様なアプローチによる支援を可能とすること。

(参考: 東京都福祉保健局 「妊産婦・乳幼児を守る災害対策ガイドライン」
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kodomo/shussan/nyuyoji/saitai_guideline/index.html
(参考: 東京都福祉保健局 「災害体験に学ぶ(妊婦や乳幼児の保護者に伝えたいこと)」
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kodomo/shussan/nyuyoji/saitai_taiken/index.html )

7.避難生活中の子どもの預かり支援が可能となるよう、保育所や学童保育、男女共同参画センター、子育てNPO、災害ボランティアセンター等との協力を前提に、体制を構築すること。

 

⑨女性・子どもの安全対策

1.災害後はDV、児童虐待が増える傾向にあること、性暴力が起こり得ることを、防災関係者への研修時には必ず話題に含めることを通して周知徹底するとともに、女性と子どもの安全対策を防災計画全体に取り入れること。その際、被害者のトラウマからの回復支援も含めること。

2.避難所の警官によるパトロールならびに、女性相談支援経験者や保健師による、女性と子どもを対象とした巡回相談支援を早期に開始するよう明記すること。性暴力については顔見知りによる犯行も多いため、プライバシーを確保して被害者が相談できる環境も確保すること。

3.暴力防止のための啓発・広報と相談窓口情報の提供を、マスコミやチラシやカードの配布など、あらゆる手段で行うこと。
その際、避難所運営関係者、男女共同参画センター、警察、医師、看護師、助産師、女性支援団体など、あらゆる関係者の協力を得て進めること。

4.女性・子どもはもちろん、高齢者・障害者等も犯罪から守るため、避難所内の安全対策と、周辺の照明の確保はもちろんのこと、通学路を含む生活主要道路の街灯の応急設置が、速やかに行われるよう定めること。

5.障害者をもつ女性については、性暴力を含む犯罪の対象となる可能性も高いため、避難所での配慮や、照明の確保などの環境改善、在宅避難中の防犯対策などについて、十分に支援が行われるようにすること。

6.帰宅困難者対策(避難誘導と一時受け入れ施設等)における、災害時要援護者と女性・子どもの安全性確保・優先的配慮について明記すること。     (例:東京都防災計画)

 

⑩ 外国籍住民など外国人支援

1.外国人支援については、在留資格や日本在留の経緯が個々人によって異なっているので(永住者、日本人の配偶者、就労している人、旅行者、在留資格なく滞在している人など)、この多様性を考慮に入れること。広報面での協力団体(マスコミやFM等)、国際交流協会や災害ボランティアセンター以外に、外国人支援団体、国際協力NGOなど、民間団体との効果的な連携のもとで災害時における外国人への支援が実施できるよう事前に協力関係を構築し、防災計画に盛り込んでおくこと。

2.外国籍住民など外国人向けの災害時広報については、民間団体と連携をとりながら、外国人のニーズに適切に応えられるような手段や言語を提供し、相談窓口も開設すること。

3.外国籍住民など外国人の中でも、特に困難に直面しやすい女性と子どもについては、外国人の多様な背景を考慮しながら、関係者の連携による重点的支援を検討すること。

 

⑪ 性的マイノリティ支援

1.性的マイノリティの被災者に関しては、当事者団体等の協力を得た形での相談体制を検討すること。特に、性的マイノリティの女性が、地域で行われている女性相談等を安心して使えるよう、相談体制を充実すること。

2.避難所における多目的トイレは高齢者や障害者のトイレ利用はもとより、女性や性的マイノリティの人の着替え等のスペースとしても機能するため、必ず設置を進めること。

 

⑫ こころのケア対策

1.災害直後から都道府県においては心のケアセンターの設置を行うようにし、被災市町村でも出来る限り早期の巡回相談等の立ち上げを行うこと。

(参考:長岡市の防災計画では、第3章18節で、「震災発生から3日以内に避難所の巡回相談等の支援を行い、必要に応じて、県にこころのケアチームの派遣要請をする」と明記。)

2.居住地以外に避難した被災者の心のケアを行うため、避難先の自治体とも連携して、相談支援を実施すること。

3.被災者のメンタル問題は、さまざまな喪失感はもとより、就労・住宅再建・家族関係・子育てなど、多様な問題と複雑に絡み合って生じる。したがってこころのケア部門も、②で提示したように総合的支援対策の中で、他分野の相談・支援システムと連携して支援に当たることができるように体制を構築し、担当部署と担当者が、災害時のこころのケア支援のあり方について共有する機会を作ること。

4.思春期の子どもへの配慮、生活リズムが違う夜間高校生や、就職できていない高卒の若者など、情報・支援から漏れやすい層への目配りを行うこと。

 

⑬ 原子力災害対策

1.原子力災害で最も配慮すべきは乳幼児・妊産婦であり、児童・青少年少女へも十分な配慮が必要であるが、国の防災基本計画は、従来の要援護者概念と変わらない記述、一括の支援内容であり、十分な対策の実施が期待できない。
国・自治体ともに、乳幼児・妊産婦・児童・青少年少女への「確実な配慮と防護」など優先化し、その方針に基づいて、計画全体を組み立て直すこと。

2.避難場所については、いかなる状況でも、乳幼児・妊産婦・子ども・青少年少女に対するできるだけ放射線の影響が少ない場所の優先提供、汚染されていない水と食料の優先提供が行われるように明記すること。

3.安定ヨウ素剤の備蓄・配布方法については、事故に際して住民、特に乳幼児や妊産婦、子ども・青少年少女等ができるだけ速やかに安全に服用できるよう、配置方法を定め(各家庭への事前配布も検討すべき)、服用を含む被爆直後の対応についての研修、各家庭に配布する場合は万一紛失した場合の緊急支給なども含め、国および自治体の防災計画で、詳しく記述すること。

※現状では、安定ヨウ素剤は役場に一括保管で、対象者の優先度も記述されていない。本年1月、原子力委員会の被ばく医療分科会で、安定ヨウ素剤の、各家庭への事前配布が提言されている。
(原子力委員会 被爆医療分科会「安定ヨウ素剤の予防的服用に関する提言」骨子(案)
http://www.nsc.go.jp/senmon/shidai/hibakubun/hibakubun029/siryo2-6.pdf )

4.原子力災害では超広域避難、特に母子避難が多く発生しているが、復旧期間の被災者生活関連記述は極めて乏しいが、地震災害対策編では、居住地以外に避難した被災者が必要な支援・サービを容易かつ確実に受け取れる体制づくり、生活再建に際して居住地以外の市町村に避難した被災者に対しても必要な情報や支援・サービスを提供するものとする、と明記されている。
原子力災害においては、居住地域外への避難者支援のための充実した体制を構築すること、その際、特に母子による生活支援・相談支援と、家庭状況にかかわらず子ども・若者の医療・メンタル支援の体制とを充実させ、国・自治体ともに防災計画に明記すること。

 

⑭ 仮設住宅(みなし仮設含む)・生活再建・復興まちづくり

大規模災害の復興過程で発生する課題の多くは、災害以前の社会構造がより顕在化した形で顕れたものである。それだけに、生活者に関する課題、脆弱な立場に立たされる人々、女性、災害時要援護者に関わる課題については、その方向性と確実に取り組まれるべき点として、防災計画にしっかりと書き込むこと。
(具体的な取り組むべき内容は「復興計画・復興政策に組み込むべき提言」を参照のこと)

1.仮設住宅については、国の防災基本計画において、入居にあたっての障害者や高齢者、乳幼児、妊産婦等の要援護者への配慮、高齢者・障害者向けの応急仮設住宅の設置努力、仮設住宅のコミュニティ運営における女性の参画などが明記されている。しかし、安全性の確保や、交通アクセス問題など、課題改善のためには具体的な取り組みが必要となる。

2.生活再建期は、仮設住宅やみなし仮設住宅での生活環境、就労問題、住宅再建、家族関係、子育てや介護など、さまざまな問題が複合的に被災者に影響を与える。
したがって、総合的な支援体制が必要であることを前提として、支援が行われるべきである。

3.復興まちづくりでは、女性の参画が確保されにくい状況にあるため、防災計画において、復興計画策定における女性の参画と、多様性の視点の確保が明記されるべきである。

 

◆PDF版は、こちら>>国・自治体の防災計画への提言 (2012年7月10日)

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