~女性団体・地域リーダーや自治体職員向けの研修やワークショップを実施しました~

東日本大震災女性支援ネットワークの活動は2年目に入っていますが、今年度の主な事業のひとつが研修事業です。主に、

1.災害とジェンダー課題に関する講座や研修の開催の促進と講師の各地への派遣
2.災害とジェンダー課題について話ができ災害分野におけるジェンダー主流化を進めることができる
人材(トレーナー)の養成
3.講師派遣やトレーナー養成の際に使うための災害とジェンダーに関するテキスト教材の開発 

に取り組んでいます。私たちは、とりわけ、
・防災政策の形成や対策にかかわる自治体職員や女性関連施設職員
・災害支援に関係の深い専門職の方(医療・福祉職・相談員・教員等)
・災害支援ボランティア・NGO・NPO、女性支援団体
・自主防災会役員や民生委員・PTAなどの地域防災のリーダー

などへの研修や人材育成を通して、災害におけるジェンダー主流化を着実に促進させていこうとしています。もちろん、一般市民の方を対象とした研修もしています。

※ネットワークに直接依頼のあった研修・講演の実例
《研修報告1》 男女共同参画関係・女性団体が企画主体の研修・ワークショップ
《研修報告2》 自治体職員向け研修
《研修報告3》 大学での研修

 

●研修・講座などの実施状況(6~10月中旬)

6月以降でカウントすると、すでに30か所以上で、RTの研修事業メンバーが災害とジェンダーに関するお話をさせていただいています。

参加者の特徴や、研修の進め方など、これまでの様子をまとめて報告します。
講師派遣依頼のある研修・講演・講座等の開催形態ですが、現時点で、講師派遣の依頼をいただいている内容を見ると、市町村や県の男女共同参画センターもしくは人権・男女共同参画担当部署が主催するケースが多く、その中をさらにみていくと、行政が主体で企画する場合と、センターの運営委員や自治体の男女共同参画推進委員会等の組織、各種女性団体連絡協議会等が主体となって(つまり市民参加もしくは市民主体で)企画する場合があります。

次いで多いのが、自治体の危機管理・防災担当部署が主体で実施するもので、それ以外は、大学、教職員組合、女性団体やDV問題に取り組む団体を含む市民団体などです。

対象で見ると、一般市民に広く呼びかけるケース、女性団体関係者のみのケース、主に自主防災組織(自治会・町内会関係者)の役員や民生委員などのケース、学校の教職員、学生、そして、自治体職員のみを対象とするケースなどがあります。

わたしたちの研修事業では、ただお話を聞いていただく場を目指すのではなく、わずかな一歩でもいいので、災害とジェンダー課題について、次のステップの取り組みを考え行動する人材が生まれてきたり、自治体の防災政策にジェンダーの視点であたらしい対策が加わったりといった、何らかの成果につながる場づくりを心掛けています。

そのため、たとえば男女共同参画担当者の方や女性団体の方から研修のご相談があった場合でも、できるだけ自治体の防災政策担当の方にもお声掛けいただき、さらにできれば自治会連合会や民生委員さんなど、地域で防災の取組みをされている関係者にも声をかけて、研修の際に一緒にお話を聞いていただけるような場にしませんか?とお話をさせていただいています。

なぜなら、男女共同参画関係者だけでこの課題を共有するだけでは、防災対策や支援のしくみはなかなか変わっていかないからです。

こうした取り組みの結果、もともと企画していた市民向けの研修や講演を、職員研修にも位置付けて防災担当者を中心に、自治体職員の方が複数で聞きに来て下さるケース、自治会役員や民生委員の方もいらして熱心に聞いて下さるケースなどが増えています。

このような場を作ることができると、その後、その地域内での政策論議や、地域防災活動のこれからの在り方について、ジェンダーの視点を入れた形で共に語り合える土壌ができるのではないかと思っています。
さらに、同じ女性団体でも普段は共通テーマをもちにくい、テーマ型の団体と、いわゆる地域型の女性団体との間でも、また若い世代にも、この災害とジェンダーの問題は共有しやすいため、地域の女性団体同士のつながりや世代を超えた課題の共有にも、役立てばと思っています。

 

《研修報告1》 男女共同参画関係・女性団体が企画主体の研修・ワークショップ

各自治体の男女共同参画行政担当や女性団体が企画主体の研修として、講師派遣の依頼を受けています。

●掛川市男女共同参画推進委員会・掛川市主催「女性・男性・家族の視点で防災力UP講座」

定員を大きく超え、約130人の市民のみなさんが参加。地域で自治会や自主防災会の役員の男性や、若い子育て世代のママさんたちなど、幅広い方たちが参加され、関心の高さがうかがわれました。終了後、男女共同参画推進委員会のみなさんと講師とで意見交換をさせていただきましたが、女性も男性も、地域への愛情と活動への熱意にあふれる方たちでした。
 

●栃木県女性団体連絡協議会主催・2回連続講座

第1回目は、災害とジェンダー課題全般についての基礎的なお話と、加えて、地域や組織の女性リーダーとしてもし災害時に避難所運営に関わることになったら!?という前提で、具体的な避難所の条件とトラブル内容を示して、どのように対応できるかを考えるワークショップの時間も設けました。

2回目は、「求められる、災害時の女性のリーダーシップ!女性ならではの医療課題や暴力防止・女性団体による多様な支援に学ぶ」と題して、特に、災害時の暴力問題がどのような背景で起こっているのかについて学び、実際に起こりそうな事例を用い、ワークショップを実施しました。初めに、昨年実施した暴力事例調査の中間とりまとめを紹介しつつ、多様な形で暴力が起こる事実を共有。その後、避難所というシチュエーションの中で、どうしたら未然に暴力を防ぐことができるのか、関係者のそれぞれの立場も考えながら、課題と対応の在り方について、グループで話し合いました。非常に熱心な議論が交わされ、1回目の災害とジェンダー課題全般についての学習とともに、災害時に起こりうる課題・対応について学ぶ機会になり、参加したみなさんからは、とても意義のある研修だったと好評をいただきました。

栃木県女性団体連絡協議会が主催した研修の第2回目の様子。この日の内容は、災害時の女性や子どもに対する暴力問題と対応
 

●「エンパワメント11(い)わて」主催「『わたし』のふっこう(復興・復幸)─いわてのふっこうと女性のチカラ─」(10月6日)

岩手県のもりおか女性センターの講座の修了生で立ち上げている「エンパワメント11(い)わて」が、復興(復幸)について「わたし(女性)」を主体に語り合う場のファシリテーターとして当ネットワークのメンバーを派遣させていただきました。

「エンパワメント11(い)わて」は、被災県としてジェンダー視点の女性の記録を残そうと、被災した人、被災していないけれども支援に関わった人など女性たちへのアンケートを実施し(150人が回答)、被災経験やそれぞれが求める・考える「復興・復幸」とは何かを聞いています。その中間集計を共有した後、参加した方たちには、これまでのあふれる思いを自由に語っていただきました。

そして最後に、復興が持続可能なくらしの場の再構築につながるためにも、もっと人づくりやくらし、地域に根差した経済、コミュニティといったソフトを中心とした、ローカルな視点での復興事業の在り方や支援について議論されるべきこと。そしてわたしたち市民、とりわけ女性たちが、復興の局面においても主体性を発揮していけるよう環境を作っていく・行動していくことの重要性を共有しました。

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講師派遣ではほかに、特に社会活動を普段行っていない女性の会社員の方などが主な参加者、といった場合もあり、企画の目的や参加者層に合わせて内容の組み立てを考え、研修内容をご提供しています。

 

《研修報告2》 自治体職員向け研修

7月~10月にかけて、自治体職員の方を対象とした研修も実施しました。
千葉県のある自治体からの依頼では、市役所の職員と男女共同参画審議会の委員、自治会や民生委員、災害ボランティア関係者などに呼び掛けての学習会が実施されました。
 

●埼玉県男女共同参画センター“With You さいたま”

毎年実施している県内の自治体職員向け研修の一コマに、今年は災害と男女共同参画のテーマを設定。当ネットワークのメンバーが講師を務めさせていただきましたが、男女共同参画担当者はもちろん、防災担当者とともに出席した自治体も複数ありました。研修は、午前・午後の1日だったため、午前は基礎知識として災害におけるジェンダー・多様性課題についての講演を、午後はグループに分かれて、実際に被災して避難所に派遣されることになったら?といった場面設定のもと、どのような判断が求められるかや、どのような避難所環境整備が必要かといったことを話し合いました。(「かだりば通信8月」に主催者からの報告記事があります)

 

●熊谷市男女共同参画担当課・職員課共催「災害と男女共同参画についての職員向け研修」

当ネットワークから講師を派遣させていただき、事例集も使いながら実践的な内容でお話させていただきましたが、庁内のあらゆる部局からたいへん多くの、しかもベテランの職員の方々にも参加いただくことができました。

 

●静岡県地震防災センター主県民防災講座「地域防災に女性の視点を」

9月に開催されたこの講座では、初めに県の担当者が静岡県内での災害とジェンダーに関する取り組み状況と今後の方針について説明したのち、当ネットワークから招かれた2名の講師より、参加した県内の自治体職員と一般市民の方々に、災害とジェンダー課題について被災地の現状とともに説明し、少しずつ出て来ている各地の自治体等での先進的な取り組み事例を紹介するといった内容となりました。

 

《研修報告3》 大学での研修

6月~7月にかけて、いくつかの大学や大学院でお話をさせていただきました。

都内私立大学の、行政学とジェンダー、法学とジェンダーの授業の1コマで、それぞれ学部学生を対象としてお話をしましたが、いずれの授業も半数かそれ以上が男子学生で、女子学生さんはもちろんのこと、男子学生さんからも、災害とジェンダーの問題には高い関心が寄せられました。

なお、このように学生や一般市民の方を対象とした場でお話する際にはまず、今まさに大規模災害で被災したとして、参加者自身と家族の状況がどうなり得るのか、といったリアルな状況からイメージをしていただきながら、女性と男性との被災における困難の違い、そしてどういった対策が必要なのかについて一緒に考える場づくりをしていくため、より一層関心を高めてくれたようです。

また、都内の女子大学の大学院が主催する公開講座でもメンバーがお話しました。
さらに、首都圏のある女子大学では教職員の方を対象に、大規模災害時の大学の危機管理対策を、ジェンダーの視点も交えてどう実践的に構築していくべきかについて、考える場づくりをお手伝いさせていただきました。

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