10月26〜27日、仙台国際センターを会場に、2100名の参加を得て開催された「日本女性会議」に参加しました。東日本大震災による痛みや悲しみの伴う経験と女性たちの懸命の取り組みを踏まえ、男女共同参画の課題をさまざまな角度から捉える形となり、意義ある大会となりました。
 

<1日目>開会式・基調講演・特別プログラム

開会式では、困難な大震災の救援活動・復興に取り組んで来た奥山恵美子市長より、被災したばかりの厳しい状況下で悩みながらも、日本女性会議の開催を仙台の男女共同参画関係者とともに決断したという経緯も含め、力強いあいさつがありました。

続く基調講演では、佐村知子内閣府男女共同参画局長より、第3次男女共同参画基本計画に基づく推進状況と、特に日本の課題とされる女性の活躍と経済活性化、そして防災・復興と男女共同参画について多くの情報共有と政府の方針が示されました。
 

◆特別プログラム「女性たちが語る3.11〜これまでと今と」

パネリストに、南三陸ホテル観洋女将の阿部憲子さん、仙台市子育てふれあいプラザのびすく仙台館長伊藤 仟佐子さん、河北新報社石巻総局記者の丹野綾子さん、福島県の桜の聖母短期大学准教授の二瓶由美子さん、阪神・淡路大震災で被災した経験から災害支援・防災活動に継続して取り組んでいる石井布紀子さんを迎え、イコールネット仙台代表理事の宗片恵美子さんがコーディネーターを務め、震災の多様な経験を全国の女性たちとともに分かち合いました。

被災しながらも“お客様”、従業員、地域の被災者、関係業者への対応を、女将という職業人としての決断力で切り盛りしてきた阿部さんの報告を皮切りに、被災地の親子をめぐる状況や、被災地のメディアとしての報道の重要性はもちろん、被災者の実情を伝えることの難しさも伝わってきました。そして二瓶さんは、原発事故が福島の若い女性たちに大変な不安を与えつづけていて、「だからこそ、福島の女子短大が学生たちに伝える事、出来る事がたくさんある」と明言され、共に歩む「連帯」の大切さを静かに、しかし力強く訴えました。


 

<2日目>分科会・記念講演・シンポジウム

午前中は、6つの分科会が実施され、熱気にあふれた議論が行われました。

・第1分科会 復興・防災に女性の声を 〜出す、ひろう、生かす
・第2分科会 「困難すごろく」でみる女子の生きづらさ(貧困問題)
・第3分科会 役に立つ「人権」の話(DVや虐待と人権感覚)
・第4分科会 東日本大震災・原発事故と母子支援〜妊産婦と赤ちゃんをどう守れるか〜
・第5分科会 企業でキャリアを積むということ〜わたしたちのネクストビジョン〜
・第6分科会 支援から交わりへ〜「外国人妻」が地域住民になる日〜

すべての分科会を聞くことはできませんでしたので、第1および第6分科会の様子をお伝えします。
 

◆第1分科会

第1分科会では、はじめにパネリストの宗片さんより、特定非営利活動法人イコールネット仙台が2011年9〜10月にかけて宮城県居住の女性を対象に実施した「東日本大震災に伴う「震災と女性」に関する調査報告」(配布調査票3,000のうち1,512人が回答)の結果を発表。家族構成の変化に伴う困難、避難所における状況、震災を経験して現在抱えている困難、復興計画に女性の視点を反映させるために盛り込むべき内容、にわけて論点を紹介。これにより、女性たちの被災経験とその困難がリアルに浮かびあがりました。

これを踏まえて関西学院大学災害復興制度研究所研究員の山地久美子さんが、東日本大震災における復興計画策定や復興まちづくりにおける女性の参画状況と工夫が見られた被災自治体の取り組み例の紹介とともに、災害復興に女性の視点や多様性を入れるための方法について提案。

また当ネットワークメンバーでもある東京女学館大学非常勤講師の浅野は、徐々にとはいえ、各地で始まっている実践性を重視した男女共同参画の視点での防災研修・ワークショップ・防災計画の見直しなどの事例の紹介とともに、主に地域防災活動や体制、そして自治体による防災政策において、男女共同参画の視点を“より戦略的・具体的に取り入れながら”、“定着するまで継続して”取り組んでいくことの重要性について提起しました。

河北新報社の佐藤理絵さんのコーディネートで議論はさらに深まりましたが、被災地を含め、全国から参加された聴衆のみなさんには、ご自身の地域・団体・自治体でも可能そうな取り組みを具体的にイメージいただけたのではないでしょうか。
 

◆第6分科会

李仁子東北大学教育学部教授をコーディネーターに、韓国・中国・フィリピンから結婚を機に日本に移住した3人の女性と、結婚を機に日本から韓国へ移住した日本人女性がパネリストでした。

「なぜ」日本に来たのかはそれぞれに違いますが、“田舎の農家”で“嫁”として暮らし始めた彼女たちの異文化の中で戸惑い、不安を抱えながらも、家族の反応や出会いによって人生を切り拓いてきたエネルギーに満ちていました。

“嫁”である限り、言葉ばかりでなく日本のあるいはその家族のもつ慣習への順応を求められる現実。子育て、介護、家計を支える就労(介護福祉士の資格を取得した方も)、地域の担い手としての役割を多重にこなす彼女たちの存在。隣人たちの“悪気のない差別的な言動”には姑がきっぱりと反論する等の「受け入れた家族の覚悟」や、職場・地域の関係も育って行く様子が伺えました。

日本以上に家制度の厳しい韓国でも、2005年から経済・産業のグローバル化に伴い「多文化社会」を目指すほうへ方向転換。「多文化が未来だ」としてアジアを中心に結婚移住をした女性たちを多文化プログラムの講師として社会の中で認めて行こうという事業が行われているということもわかりました。

彼女たちの、「被災と復興の過程は、私たちにとって地域の人たちの役立てるチャンスでもあり、貢献して行きたい」と言う発言も印象的でした。

コーディネーターからは、ジェンダーと異文化の厳しさからウツ状態になる外国人女性もいるという現実についても明示しつつ、国際結婚をして日本の地方で生活をする決断をする彼女たちは、新しい状況にチャレンジする“決断と勇気”をもった人であることを認め、日本の私たちがその勇気に対して尊敬を持ち、関係をつくることができればとの提起とともに、多様な生き方を受け入れることは、男女共同参画の視点そのものであるということを共有しました。
 

◆記念講演「女性のエンパワメント~ノルウェーからのメッセージ」

午後はノルウェー王国元首相のグロ・ハーレム・ブルントラントさんのビデオメッセージと、ノルウェー王国国会議員アネッテ・トレッテバルグステューエンさんの講演からスタート。

世界1、2を争う男女平等先進国のノルウェーでも、当初は男女平等の推進に抵抗がなかったわけではなく、強い政治的な意志と女性たちのエンパワメントを含む実践・実行の継続があってこそ成功してきたこと、そうした取り組みが世代を越えて受け継がれていることがわかりました。

特に印象的だったのは、ノルウェーの産業界でも当初は、女性の管理職や役員への登用には抵抗が大きかったものの、実際にそうしたポジションの女性が増えた会社では、不祥事が減ったり人材育成が細やかになったりして、企業の業績に大いに貢献する傾向が明らかになっていったため、大いに理解が進んだというお話でした。
 

◆シンポジウム「きめる、うごく、東北(ここ)から」

パネリストに東レ経営研究所ダイバーシティ&ワークライフバランス研究部長の渥美由喜さん、RQ被災地女性支援センター副代表の石本めぐみさん、北海道の「場づくり師」日置真世さん、コメンテーターに前千葉県知事で男女共同参画と災害・復興ネットワーク代表の堂本暁子さんと前出のトレッテバルグステューエン議員、コーディネーターは東北大学大学院法学研究科教授の辻村みよ子さんで進められ、女性がもっと社会参画していく必要性はもちろん、男性の多様な生き方をも可能とする社会の実現も求められていること、
障害があっても貧困でも多様な生き方を可能とする地域づくり、そして、女性の政治参画と経済的なエンパワメントの重要性も改めて浮き彫りになりました。
 
 

2日間を通して改めて、日頃の男女共同参画の実践を抜きにしては、防災も安全もあり得ないことがわかりましたが、最後に発表された仙台宣言では、女性の言葉でその決意が表明されました。

 

▼日本女性会議2012仙台
・オフィシャルサイト  http://joseikaigi2012sendai.jp/
・大会内容  http://joseikaigi2012sendai.jp/detail/
・仙台宣言   http://joseikaigi2012sendai.jp/about/index.html#declaration

by 浅野幸子

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