NPO法人イコールネット仙台」代表理事の宗片恵美子さんは、震災前から防災・災害復興を重要課題ととらえ、「災害時における女性のニーズ調査」を実施し、提言されておられました。また、この調査結果は、震災直前とも言える2011年3月1日、内閣府中央防災会議「地方都市等における地震防災のあり方に関する専門調査会」において、報告されていました。

この報告は、3.11直後からの男女共同参画局にとって、力強い指針になったはずです。宗片さんは、現在もこの調査会の委員ですが、被災後は、「エルソーラ仙台」での「せんたくネット」の他、支援活動を続け、昨年10月末に仙台で開催された「日本女性会議2012仙台」でも副実行委員長を務められ、大成功に導きました。「イコールネット仙台」は、こうした活動とともに、2011年秋に、宮城県の被災女性への調査を実施し、その報告書が刊行されましたので、これを機会に寄稿していただきました。

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●特定非営利活動法人イコールネット仙台 代表理事 宗片恵美子

2012年10月26日〜28日、「きめる、うごく、東北(ここ)から」をテーマに、日本女性会議2012仙台が開催された。全国から2,000人を超える参加者を迎え、被災地から、さまざまなメッセージが発信された。一時は、開催も危ぶまれたが、盛会に終えたことに運営にかかわった一人として安堵の思いでいっぱいである。

被災地で起きたこと。これは、全国どの地域においても他人事とは考えられない出来事だったはずである。さらに、震災時に発生した女性たちをめぐる課題は日常につながる重要なことがらであり、多くの参加者の胸に響くものであっただろうと思う。

イコールネット仙台は、男女共同参画社会の実現をめざし、生活すべてをテーマに幅広い活動に取り組んでいる。防災・災害復興についても、震災前から重要なテーマとしてとらえ、2008年に仙台市内の1,100人の女性たちを対象に「災害時における女性のニーズ調査」を実施した。その背景には、宮城県沖地震が高い確率で発生すると予測されていたことや、阪神淡路大震災で、女性たちが抱えた困難が数々明らかになっていたことがある。以降、調査結果を6項目の提言にまとめ、防災・災害復興に女性の視点が必要であることを伝える活動を続けてきた。理解者が広がる感触を得ながら、継続の必要性を実感してきたちょうどその時期に発生した東日本大震災。もっと早く取組みを始めるべきだったという悔いが残る。

被災地では、調査の中で多く寄せられていた避難所への不安や心配が、まさに、現実のものとなっていた。私たちは、震災発生と同時に避難所をお見舞い訪問しながら女性たちの困りごとを聞き取り、支援につなげる、また、着のみ着のままで避難してきて洗濯に困っている女性たちのための洗濯代行ボランティアや仮設住宅に移ってからのサロン活動等、被災女性に向けた支援活動を続けてきた。

男女共同参画がいかに根づいていなかったか。災害時のような非常時には、やはり意識の底にある固定的な考え方が頭をもたげてしまうのか。男女共同参画に長く取り組んできた私たちにとって残念な現実を目の当たりにすることになった。そして、被災地で、女性たちは何を体験し、何を考え、どう行動したのか、被災時・復興時の女性たちをめぐる課題を洗い出し、解決に向けていかなければならないという考えが強くなっていった。

そこで、震災発生半年後の2011年9月・10月、宮城県内の女性3,000人を対象に、『東日本大震災に伴う「震災と女性」に関する調査』を実施した。数字には表れにくい女性たちの現実を把握するため、自由記載の設問を多くしたことから、回答してくださった女性たちには負担をおかけしたが、1,512人の回答を得ることができた。

設問構成は、主に以下の通りである。
1)家族について
2)住まいについて
3)避難所について
4)震災に伴い抱えた困難
5)被災者支援について
6)復興計画における女性の参画について
7)震災を通しての考え

調査結果から、特筆すべき点を紹介すると、震災前後に家族構成に変化があったとしている人たちが抱えた困難について、震災同居、家族離散、家族介護等を理由に体調・精神的ストレスを訴える回答が多く、家庭的責任を負う女性たちの現実が明らかになった。また、避難所についての設問では、長期に及ぶ避難所生活のため、設備面についての不安が多く寄せられており、特にトイレに関する記述が多く課題として残った。更衣室・仕切り・授乳室等プライベート空間が十分ではないために女性たちがいかに大きなストレス抱えたかも明らかになった。津波被害によって着の身着のままで避難した女性たちにとって、洗濯機は必需品であり、当団体がせんだい男女共同参画財団と協力して取り組んだ洗濯代行ボランティアは、ニーズに沿った支援であったといえる。避難所で感じた不安については、「集団生活によるストレス」が最も多い回答となっており、地域の顔見知り同士で集団避難しているとはいえ、プライベート空間が確保されない中で、常に他人の目を気遣いながら暮らすことは、ストレス以外の何ものでもないことを示している。また、ケアの必要な子どもや高齢者を連れて避難した女性たちからは、「まわりに迷惑をかけないか心配だった。気を遣った」という声が多く、支援の必要な人に支援が届かないという状況を生み出していた。

続いて、震災に伴い、抱えている困難について「家族」「地域」「仕事」「健康」の4分野に関して尋ねた。中でも、「地域」の分野では、地域防災の重要性がいわれている中、地域コミュニティが力を発揮したといった内容がある一方で、シングル女性や男性、働く女性、学生、震災に伴い他の地域からの避難者等の中からは、どうしても入り込めないという声もあった。排除しない、孤立させない、誰をも受け入れられる風通しのいい地域コミュニティが求められていると言えよう。「仕事」については、仕事量増による負担、失業・退職・転職、家族のケアと仕事のはざまで抱える困難等、働く女性たちにも震災が大きな影を落としていることがわかった。当然、「健康」についても、「不眠」「うつ」「不安障害」等、健康障害を起こしている女性たちの姿が浮き彫りになった。震災体験が女性の心やからだに多くのダメージを与えていることは確かだ。

私たちは、この震災で、女性たちが抱えた困難を洗い出し、視覚化することで、明確な対策につなげたいと考えている。
女性はすべてが弱者ではない。困難の中に留まっていたわけでもない。女性たちは、被災者でありつつ、近隣の安否確認や避難所や仮設住宅の支援等、支援者として力を発揮したことも事実だ。地域を知り、生活者の視点をもった女性たちならではの実践があったことは確かだ。防災や災害復興の分野はとかく男性の領域と考えられがちだが、女性がより主体的にかかわることで、実態に即した適切な取り組みができる。地域防災の担い手として女性たちの存在が大きいことがわかる。

また、女性たちは、この震災を経験し、復興計画を議論する場に女性の声を届けなければならないことを実感した。そこで、復興計画に女性の視点を反映させるために盛り込むべき内容を聞いた。

結果、「障害のある人、妊産婦、病人、高齢者、子どもなどのニーズをふまえたきめ細かなサポート体制を整備する」「女性の地域防災リーダーや災害復興アドバイザーを育成し、地域に住む人々の支援体制を実効性のあるものにする」「女性の視点に配慮した避難所運営マニュアルをつくる」「避難所や仮設住宅での運営に女性たちの参画が必要であることをマニュアル化する」といった内容が順次続いた。この回答は、女性たちの経験に基づいた重い結果として受け止めたい。家族のケアを担いながら、ギリギリのところで、この震災を乗り切ってきた女性たち。しかし、これは、個人的な課題として片付けるのではなく、社会的課題として解決に向けるべきだという女性たちの声である。そして、3月11日2時46分、地域には男性たちが少なかった時間帯だ。女性たちは、地域防災に主体的にかかわる必要性を実感した。女性たちも地域を守る責任を負う。そのための力をつける必要がある。さらに、避難所、仮設住宅、いずれも人権が尊重される空間にしなければならない。そのためには、「女性の視点」が一つの大きなカギになる。女性自身はもちろん、お年寄りや子どもたち、障害のある方などの困難をも理解し、実体験を踏まえた女性たちの声が反映された運営こそが現実に沿ったものであるはずだ。しかし、今回の震災では、女性たちの声がなかなか届きにくかった。マニュアル化してしくみをつくる、女性たちの参画をより確実なものにするための環境づくりとしてマニュアル化をすすめる。この回答もまた、女性たちの声を届ける仕組みづくりの必要性を意味している。これらはまさに、女性たちからの政策提言だ。女性たちの切実な声だ。

私たちは、この調査結果をふまえて、「東日本大震災に伴う男女共同参画の視点からみる防災・災害復興対策に関する提言」をまとめた。2008年にまとめた提言6項目を生かして、さらに、震災体験をふまえ、具体的な内容を盛り込んだ。

この提言を東日本大震災を経験した女性たちの「被災地からの提言」として全国発信するべく活動を展開している。今は、防災をキーワードに男女共同参画のネットワークをつくるチャンスだ。女性の声を届ける場の獲得に向けた仕組みづくりや環境づくりを実現していかなければならない。

今、このアンケート調査とともに行った聞き取り集「40人の女性たちが語る東日本大震災」の編集にあたっている。保健師、看護師、介護士、教員、シングルマザー、セクシュアルマイノリティ、障害のある方など多様なライフスタイルを生きる女性たちが、3月11日、どのような体験をし、何を考え、どう行動したのか。それぞれが語る3月11日をまとめた。2月末には発行の予定である。アンケート調査報告書とあわせてお読みいただければと思う。

▼「災害時における女性のニーズ調査」2011年3月1日、内閣府中央防災会議「地方都市等における地震防災のあり方に関する専門調査会」提出資料
内容はこちらでご覧になれます>>>(PDF)

●「調査報告書」購入希望の場合
代 金・・・1冊800円+郵送代
申込先・・・特定非営利活動法人イコールネット仙台
       FAX022-234-3066  または  emuna[アットマーク]ve.cat-v.ne.jp

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