5月17日、日本が批准している国際人権規約のひとつである社会権規約について、国連社会権規約委員会から日本政府に対する総括所見が出されました。30を超える「勧告」(※1)には、震災後の女性を含む差別を受けやすい、災害脆弱性の高いグループのニーズが、避難時や復旧・復興に際し十分考慮されていないと指摘し、災害のマネジメントにおいてこうした人々の経済的、社会的、文化的権利の享受において差別されないようにとの勧告が盛り込まれました。

経済的、社会的、文化的権利の享受における差別とは、例えば災害支援金等における世帯主主義の弊害を指しているものであり、社会権規約が規定している労働や健康、住居などにおいて差別がないようにと求めるものです。

(※1)総括所見(原文)は、以下のサイトからご覧になれます。日本の国旗のイメージがある行の、一番右の列の「E」をクリックしてください。
http://www2.ohchr.org/english/bodies/cescr/cescrs50.htm

 

 

総括所見は、日本政府が社会権規約に定められていることをいかに履行しているか国連の委員会が審査した結果、日本政府に出される「勧告」です。前回の審査は2001年で、12年ぶりに4月29日にスイス・ジュネーブで審査が行われました。審査には、東日本大震災女性支援ネットワーク(RT)からも世話人2名が参加し、規約委員会委員に直接、震災後の女性・マイノリティの問題を訴えてきました。(※2)

(※2) 審査に先立って4月28日に行われたランチタイムブリーフィング、NGO公式セッションでRTが行った発言の資料は下記のリンクからご覧いただけます。

ランチタイムブリーフィング資料(pdf)
NGO公式セッション資料(pdf)
委員の質問を受けて提供した補足資料(pdf)

 

審査では、委員から、災害弔慰金、災害障害見舞金、被災者生活再建支援金、義援金等における「世帯主主義」のこと、復興に係る政策決定における女性の平等な参画について発言がありました。これらの発言や、総括所見に震災後の女性を含む差別を受けやすい災害脆弱性の高いグループに関する勧告が盛り込まれたのは、RTの働きかけによるものです。

 

勧告の翻訳は、「ARC 平野裕二の子どもの権利・国際情報サイト」の「社会権規約委員会:日本に対する第3回総括所見」(下記URL)からの引用です。すべての総括所見の日本語訳を見ることができます。
http://www26.atwiki.jp/childrights/pages/234.html

<該当箇所>
勧告 パラ24
東日本大震災および福島原発事故の結果に対する救援対応の複雑さに留意しつつ、委員会は、避難の際にならびに再建および復興の取り組みにおいて、不利な立場および脆弱な立場に置かれた集団(高齢者、障害のある人、女性および子ども等)の特有のニーズが十分に満たされていないことを懸念する。(第11条、第2条第2項)

東日本大震災および福島原発事故の結果から得られた教訓により、救援および復興のための今後の取り組みにおける被災コミュニティ(脆弱な立場に置かれた集団を含む)のニーズへの対応を改善するための新たな体制が整備されたことに留意しつつ、委員会は、締約国が、災害対応、リスク軽減および復興のための取り組みに対して人権を基盤とするアプローチをとるよう勧告する。とりわけ、委員会は、締約国が、防災計画において経済的、社会的および文化的権利の享受に関する差別が行なわれ、またはそのような差別がもたらされないことを確保するよう勧告する。

委員会は、東日本大震災および福島原発事故の結果への対応に関する、ならびに、避難の際にならびに再建および復興のための活動において被害者がどのように経済的、社会的および文化的権利を享受したかに関する包括的な情報(性別および脆弱な立場に置かれた集団別に細分化された統計データを含む)を次回の定期報告書で提供するよう、締約国に対して要請する。委員会はまた、締約国に対し、裁判を受ける被害者の権利がどのように保障されてきたかについての情報を記載するよう要請する。

RTでは、今回の勧告を関係各所に周知するとともに、政府に対して速やかな履行を求めていきます。
(報告=RT世話人 山下梓)

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