5月11日(土)、YWCA(東京・御茶ノ水)を会場に、災害とジェンダー・トレーナー養成研修の修了生を主な対象とした「フォローアップ研修」を実施しました。

東日本大震災女性支援ネットワークの研修プロジェクトでは、災害とジェンダー分野でリーダーシップを発揮できる人材の育成を目的としたトレーナー養成プログラムを行っています。その一環として、昨年12月はじめに約20人の参加者の方を対象に、2日間の研修を実施しました。2日間で基礎知識をお伝えし、ワークショップなどのアクティビティを体験していただくことは可能ですが、ワークショップのファシリテーターとしても活動するには、やはり経験も必要となります。

そこで、基礎知識や研修の場づくりのポイントなどを学んだ修了生の方たちに、ワークショップの実施を練習する場を設けること、災害とジェンダー分野に関する最新の政策動向や参考となる資料を学ぶことなどを目的として開催したのが、このフォローアップ研修です。基礎研修の修了生以外にもオープンに参加を呼びかけさせていただき、この日は8人が参加してくださいました。

 

◆午前:避難所運営に関する政策や研修に役立つ資料を紹介

はじめに、「避難所」に関する最新の動向や情報について共有しました。災害とジェンダーに関する認識や具体的な取り組みを、自治体の政策や地域の実践の場で浸透させていく際に、「避難所」は適切な入口だと言えます。

まず、内閣府防災担当が昨年度検討会を設置してまとめられた『避難所における良好な環境の確保に関する検討会報告書』(作成:内閣府防災担当)を全員に配布して、そのポイントについて、検討会委員も務めた当ネットワーク研修プロジェクトコーディネーターの浅野から紹介しました。この報告書をもとに今後、ガイドラインが作成されることになっていますが、男女別に必要なスペースや物資の確保はもちろんのこと、避難所運営における女性の参画、乳幼児のいる家庭への配慮、避難所運営において食事の支度や清掃が一部の人に偏らないようにすること、避難所は生活支援の必要に応じて在宅避難者にも物資や食料も提供することなど、これまでの大規模災害で課題になってきたことへの対策が、一通り明記されていることを共有しました。

次に、『避難所運営マニュアル策定指針』(作成:三重県地域振興部地震対策チーム)について、池田が紹介しました。近年は、都道府県が市町村向けに避難所運営マニュアル策定のガイドラインを作るようになってきていますが、中でも三重県のガイドラインは、内容が特に充実しています。

このガイドラインは、東日本大震災において、避難所運営に災害時要援護者と女性の視点が欠如していたという経験をもとに、昨年度末に改訂されたそうです。「避難所運営における配慮すべき点」として、女性、外国人、介助・介護が必要な高齢者、障害者、妊産婦・乳幼児、子どもの別に、基本的な配慮の考え方、具体的にとられるべき対策、必要な対策が取られているか確認するための項目がまとめられており、先進的な内容を含んでいます。

 

このように、自治体によってまだまだ差があるとはいえ、政策面ではジェンダー視点がそれなりに入ってくるようになった避難所運営ですが、災害が実際に起こった時にこうした視点が本当に生かされるかどうかは、地域の防災訓練や地域の防災リーダー研修、避難所運営に携わることになる自治体職員向けの研修に、実践的な形で取り入れられているかが重要となります。

そこで、『男女共同参画の視点を取り入れた「安心避難所づくり」ハンドブック ~共に支え、助け合う地域づくり~』(作成:青森県男女共同参画センター)、および『男女共同参画の視点で取り組む防災ハンドブック』(作成:栃木県・(公財)とちぎ男女共同参画財団) 《県民向け》、《支援者向け》を紹介しました。
いずれも、災害時に避難所を設営する場合の必要な環境とそれを設置する際の方法や、必ず求められる支援の内容について、イラストや図を駆使して大変わかりやすく紹介されており、地域への定着を図っていく上で大いに参考となるものですので、ぜひウェブサイトからご覧いただければと思います。

 

◆午後:研修教材を使ったワークショップ

午後はRTの参加型教材のファシリテーター実践(演習)を行いました。
トレーナー養成のなかでは「何を伝えるのか」と同様に「どう伝えるのか」は大変重要なことです。参加型学習は、得た知識を人と共有し、ありたい社会の姿に必要な行動につなぐ「あたま・からだ・こころ」を育てるものです。知識や経験も様々な人々の中から、ジェンター・多様性の視点という共通基盤を作り、ともにビジョンや目標をつくっていく場のファシリテーターの第一歩として、12月の2日間の研修では、いつかのアクティビティの体験や話し合いを体験してみました。しかし、自らがファシリテーターとなって実践するには、2日間の研修だけは決して十分とは言えません。そこで、フォローアップ研修では、「イラスト教材」と「ケースメソッド教材」それぞれ一例ずつとりあげ、研修の修了生と当日参加者3〜4名がチームを作って教材を読み込み、進行の検討など準備する時間もとって実践しました。

 


「イラスト教材」では、女性ボランティアの不安を表したイラストを元に、災害ボランティアの活動内容や活動環境についてジェンダーの視点からみた課題を共有しつつ、幅広く女性の災害支援活動の際に必要とされる配慮について考えていきました。
「ケースメソッド教材」では、避難所で必要な生活環境や物資について口にしない女性災者たちから、意見を聴きだすのに苦労したという支援者のお話(ケース事例)読んで、立場や性別を問わず、すべての人が必要な支援を求め、それが得られるには、支援にあたってどのような情報収集・活用の手法と体制が必要なのか、考えました。
実際に進行する立場に立つと、進行の手順や時間管理等の技術的な面だけではなく、ファシリテーター自身の男女共同参画のビジョンや価値観、学び手に対する姿勢も問われることになります。また、身近な場で、学びの場をつくることもファシリテーターとしての役割の一つです。
参加者の振り返りでは、この経験から、発信する立場の自分のありかたを積極的に見直す機会になったなどの感想や、場づくりのアイデアの交換が行われました。

次回のフォローアップ研修は7月28日を予定しています。研修修了生ほか関心のある方のご参加をお待ちしております。

(報告=RT研修プロジェクト・コーディネーター 浅野幸子)

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