ジェンダー・アクション・プラットフォーム(GAP)と特定非営利活動法人 オックスファム・ジャパンより、7月4日に仙台で開催された、世界防災会議の報告がありましたのでご紹介します。

+  +  +

世界防災閣僚会議in東北 (7/3,4)―サイドイベント―開催報告

7月4日「震災と女性:国際基準はどこに?
  ~被災地から見えてきたこと~」

 

ジェンダーの根幹問題が浮かび上がったサイドイベント

2012年7月4日、ジェンダー・アクション・プラットフォーム (GAP)と、国際協力NGO・オックスファム・ジャパンは、世界防災閣僚会議in東北のサイドイベントとして、「震災と女性:国際基準はどこに?~被災地から見えてきたこと~」を開催しました。「妊産婦の保護と支援」と「震災対応における世帯主中心制度の壁」をメインテーマとして、発災直後から現場で支援にあたってきた実務家・専門家に登壇していただきました。

福島県助産師会の石田登喜子氏は、「避難場所を求め、県内・県外を転々と移動した妊婦や母子がたくさんいた。分娩できる場所を求めて出産難民になった人もいた」と報告。平時から、出産直後の母親にはケアが不十分で、育児へのとまどい、乳房トラブル、放射線に対する不安など様々な悩みを抱え、孤立している状況があることがわかったと述べました。そこで、退院直後の母親の支援体制と0歳児の母児が集える場所を作る必要があると提言しました。

産婦人科医の吉田穂波氏は、「国際的には、妊産婦は全員がハイリスク弱者であり、優先的に避難させるべきという考え方が浸透している。ガイドラインもあれば、電話一本で世界の災害現場に支援を供給する仕組みもある」と述べました。しかし、今回の震災ではそうした知見や情報が活かされなかったと指摘。妊産婦への影響調査と分析、緊急救援従事者に対する妊産婦対応の訓練、母子の所在を把握するためのオンライン連絡網の構築などを提案しました。

参画プランニングいわての平賀圭子氏は、震災直後から避難所をまわり、女性たちのニーズを聞きとり、支援物資を直接供給した経験を発表しました。「避難所の男性リーダーに女性のニーズを言うと、『わがままだ』『ぜいたくだ』と拒否されるケースが多くあった。一気に時代が逆戻りし、家父長制や男女の役割分担に支配されたような空気が漂っていた」と指摘しました。

しんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石千衣子氏は、「義援金や生活再建支援金を世帯主が申請するというシステムは、女性にとって不利益に働くことが多い。阪神淡路大震災の時にも指摘され、裁判の事例もある。残念ながら16年後、また同じことが起きている」と述べました。被災者登録の含め、救済・支援システムを「世帯単位」から「個人単位」に移行させることが必要だと提言しました。

モデレーターの目黒依子GAP代表は、「今回焦点を当てた2つのテーマはジェンダーの根幹問題。妊娠・出産が女性の役割として当然という意識が、妊産婦ケアの軽視につながってきたこと、平常時の社会の仕組みが『個人単位』ではなく、『世帯単位』であることによる不平等が、災害を通じて浮かび上がってきた」と指摘。前日、平野復興大臣が貴重報告の中で「緊急対応や復興支援で女性の視点が欠け、女性の苦労が長引いた」と述べたことを受け、「今日のパネリストからの提言から学び、防災と平常時の社会の仕組みにおける改革を進めていけるかどうかがカギだ」と結びました。

メディアでは、現在河北新報(7/8[NGO被災地支援パネル討論]に掲載されたということです。
TVディレクターなどは興味を持ってくれていましたが、テレビカメラを入れて取材をするというところまでは残念ながらいきませんでした。

 

玄葉外務大臣とクラークUNDP(国連開発計画)総裁が「震災と女性」のブースを訪問

サイドイベントと並行させて、「震災と女性」をテーマにブース出展も行いました。

2011年度事業のパートナー団体(ジョイセフしんぐるまざあずふぉーらむ全国女性シェルターネットワーク東日本大震災女性支援ネットワークFACIL)の活動を紹介するパネル展示、東日本大震災が作成した、「事例集」やイラストを使った研修教材とスフィアスタンダード、参加型アクションリサーチ、フォトボイスの作品7点、ジョイセフの女性支援セットなどを展示しました。

イベント自体があまり人手が多くなかったものの、ブースを訪れた方々は、男性、女性など様々な方々で、オックスファムのスタッフが展示を説明すると興味深く聞いてくださる方が多かったと思います。フォトボイスは10×14センチ大のフォトフレーム7枚に入れて展示しましたが、画像と字が小さかったせいか、訪問者の目に最初に行かなかったところが反省点です。それでも訪問した男性・女性にフォトボイスの説明をして写真を見ていただくと「大変貴重な取り組みだ」「メッセージに心打たれる」というコメントが聞かれました。また、妊産婦の方にジョイセフが配った女性支援セットは基礎化粧品や下着のほか、コンドームが入っており、訪問者とお話をするきっかけづくりができたかと思います。

ブースには共産党の高橋議員が訪問し、「先日は東日本大震災女性支援ネットワークの院内集会にご出席されていましたね」とお声がけをすると「国会で質問しましたよ」とおっしゃっていました。また、共同通信社の所澤記者が訪問し、事例集を手にとって「前にも見ましたがこれは本当にこれいいですよね。」と話していました。

そして会議初日の2012年7月3日(火)、本会議の終了後、予定外に数あるブースの中からGAPとオックスファム・ジャパンの共同展示ブースがクラークUNDP(国連開発計画)総裁と玄葉外務大臣の訪問を受けました。

本会議の開会式で平野復興大臣が、今回の東日本大震災の反省として、女性への支援が不充分であったと言及したことを受け、玄葉大臣がブースのテーマと展示に非常に関心をもたれた様子でした。

大臣は、「平野さんもおっしゃっていたように、女性の視点は非常に大切だ」「こうした女性の視点などは、災害の前から検討する必要がある」と話しながら、ブースの展示物を視察しました。

 

《共催団体》

ジェンダー・アクション・プラットフォーム(GAP)
国際的な知見とネットワークを持つシンクタンク型NGOとして、①日本の国際協力・ODAのジェンダー主流化、②ジェンダーに関する国際人権規約・国際合意の履行の推進、③ジェンダー・リテラシー 強化を目的とした活動を行っています

特定非営利活動法人 オックスファム・ジャパン
オックスファムは1942年にイギリスで設立され、世界90カ国以上で活動する国際協力団体です。東日本大震災においては、世界各地から寄付を募り、女性を中心に延べ4万人の方々に緊急支援物資の支援、相談事業、政策提言活動を実施した日本のNPOをサポートしました。

※また、英語版はYou Tubeでご覧になれます。
http://www.youtube.com/user/oxfamjapan (9つの動画に分かれています)

◇本件に関するお問い合わせ: (特活)オックスファム・ジャパン 高橋聖子
TEL:03-3834-1556   FAX:03-3834-1025
E-mail:kiyokok@oxfam.jp

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

Oxfam

協力:国際協力NGOオックスファム・ジャパン
URL:www.oxfam.jp